微熱

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灯台の入場料を払って
エスカレーターの列に並ぶ。

1番上は展望台になっているから。



そこそこ人がいるエレベーターに乗り込むと
わざわざ位置を変えて私を壁側にしてくれる二階堂くん。




｢先生、こっち」

｢…ありがと｣




小さめに呟いてくれたけど、二階堂くんの隣にいた人がチラってこっち見てきた。





展望台に到着してエレベーターのドアが開くと、目の前には開けた景色が360°広がっている。



天気も良いから、
視界も晴れていて気持ちがいい。



ガラスに近寄って、ビーチを見下ろすけど
二階堂くんは私より結構…いや、かなり後ろにいる。



なんならエレベーター降りてそのままくらい。





｢見ないの？海、綺麗だよ｣

｢……俺、高いとこダメだった｣




よく見るとガチガチに力入ってる二階堂くん。

手、ぎゅーって握ってるし(笑)





｢ふふふふ(笑)なのにここ来たかったの？｣

｢だって、定番かなって、思って｣

｢落ちないから大丈夫だよ。おいでって｣





手招きするけど、
ふるふるって首を振る二階堂くん。





｢じゃあそこにいて？1周してくるから｣



景色を楽しみながら、
ゆっくり歩き出すとぎゅうって内側の腕にしがみついてくる二階堂くん。




｢ちょっと、｣

｢一周したら離すから。お願い、先生｣

｢……じゃあ、もうちょっと内側歩こう｣





窓際よりもだいぶ内側を歩き出すと、
二階堂くんの手の力も少し弱まった。





｢…あのね、
あんまり先生って言わない方がいいかも｣



さっきもそうだけど、
たまに見てくる人がいるから。


小さい声で二階堂くんに告げると
なんとなく意味が分かったのか頷いた。




｢…あぁ、そっか。｣


｢一応、ね。別に何もないけど｣




そう言うと、じっと私を見てくる。




｢…A、って呼べばいいの？｣

｢…え？｣

｢Aちゃん？どっちがいい？｣

｢…どっちもよくないでしょ｣

｢だって決めとかないと困るじゃん｣



でしょ？って開き直って聞いてくるけど。

こいつめ。



未だに私の腕にくっついてるから、
窓際まで近付いてみる。



｢ごめっ、ごめんなさい！マジでダメだって！｣



さっきまで生意気だったのに
急に腰が引けてるし


ごめんなさい、って小学生が言うみたいで。

可笑しくてふふふって笑うと、
二階堂くんもケラケラと笑った。

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