恋愛のススメ〜北山の場合〜

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乾かし終わって、

｢細かいとこ調整さして｣

ってまたケープを巻いてハサミを握る北山さん。



鏡に映る私の髪の毛は、
アッシュの効いたベージュに綺麗に染まってた。


自分で言うのもあれだけど
めちゃくちゃ可愛い色だな、これ。


自分で自分の髪色に見とれている横で
カチャカチャと物凄い速さでハサミを動かしてく北山さん。


目は真剣だし、やっぱりプロだ。



｢おし。軽く巻きまーす｣


ハサミからコテに持ち替えて、
くるくると髪の毛に巻き付けていく。


それだけでも充分可愛くなってるのに、
んー、って少し悩んだ後ハーフアップにしてくれた。


仕上げに軽くスプレーしてくれて。



｢はい、完成｣



鏡の前にいるのは、
自分とは思えない程の可愛い髪型の私で。




｢めちゃくちゃ可愛い……｣

｢気に入ってくれた？｣

｢え、すごい。北山さん、すごい！｣

｢どういたしまして｣



よくインスタとかで見る波ウェーブに、
後れ毛ありのゆるふわハーフアップ。

自分で簡単にできる☆とか書いてあるけど
成功した試しなかったやつ！


それに優しく見えるこの髪色、最強じゃない？



｢自分じゃないみたい…｣

｢そ？俺ん中でAはAのまんまだけど｣


座ってる私の顔の高さに少し屈んで
ニコってする北山さん。


チャラいだけじゃなくて、
やっぱり実力もすごい人なんだね。

カリスマって、本当じゃん。



｢さ、寿司行こうぜ。腹減ってきた｣


ケープを外してくれて、
片付けを始める北山さん。

時計は18時を指してる。



片付けが終わった北山さんを待ってると、
お待たせってそのままお店出ていこうとする。


｢北山さん、お金払います｣

｢あー、いらない｣

｢ダメです。
カットモデルだって普通お金払うでしょ｣

｢つかカットモデルじゃねーけどな｣

｢はい？とりあえずこんな良くしてもらって
タダとか無理です。
3万しか持ってないけど足ります？｣


鞄に手を突っ込んだら、その腕を掴まれた。


｢いらねって言ってんの。
俺がAのこと勝手に自分の好きなように変えただけだし｣

｢でも、｣

｢うるさいとチューすんぞ｣

｢それは嫌です｣

｢即答すな。｣


結局お金は受け取って貰えず、
北山さんの車に乗ってる。



乗る時に後ろのドア開けたら

｢なんでよ！｣

って突っ込まれて助手席に座ってる。

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