48 含み ページ48
スマートな動きで席について
「翔君、あの○○会社の件なんだけど━━。」
とすぐに仕事の話を始める人。
確かに私が入院中
届けられていたお花の中に
名前があって
櫻井さんに聞いたら
「仕事仲間だ。」って言ってた。
「おい、おい、潤。
久しぶりに会って、仕事の話？
まずは乾杯だろ？(笑)」
「えっ、このメンツでそれ必要？(笑)」
私のことをちらりと見て
話すのは
確かに私のことをよく知っているかの表情
「まあ、久しぶりに会うんだからさ、
……それにAだってまだ……。」
櫻井さんが言いにくそうに言葉を濁すと
松本さんはそれを全て理解して
「あぁ、まだなんだ。」
と呟いた。
オーダーして
先にきたシャンパンで乾杯をした。
「じゃあオレのこともキレイサッパリ？」
松本さんが苦笑いを浮かべながら私を見る
「はい、……すみません。」
「潤、あんまりAを苛めんな。
オレのことさえ、まだ思い出せてないんだからな。……しかたねぇだろ。」
櫻井さんがフォローしてくれる
「記憶ないって言ってるけど、逆に全部忘れたい何かがあったとかじゃなくて？……(笑)。」
何かを含んだようにニヤリと笑う松本さん。
ゾクッとした
何か知っているの？
この場で言うことは憚れる
でも言わずにはいられなかった
「松本さんは何を━━
「潤、そういえば今度さ━━」
櫻井さんは遮るように松本さんに仕事の話を振る
それから
ずっと仕事の話になって
食事中も松本さんと話す隙さえ与えられなかった。
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作者名：やわらかなあたま | 作成日時：2017年8月29日 16時
