32 夜景 ページ32
━日曜日━
櫻井さんの仕事の都合で
夕方から会うことになった私達
『あと15分位で着くから時間になったら出ておいで』
きたメールを見て舞い上がる
私の知ってる世界では
画面の中でしか見れないアイドルの方
その方と二人だけで出掛けるなんて
どんな顔で
どんな気持ちでいればいいんだろ？
日を重ねるごとに
反比例して
この状況に順応出来なくなってる私がいた
「おまたせ。乗って？」
運転席から助手席側のパワーウインドウを開けて顔を覗かせた櫻井さんは
助手席に乗るのをためらっている私に気付いて
車から降りて
「お嬢様、どうぞ。」
車のドア開けてエスコートしてくれた
━━あっ、これあのドラマのやつ?!━━
もちろん私は綺麗な女優さんなんかじゃない
ただ今は何の因果か『お嬢様』ではあるのだけど。
今の生活に違和感をもって暮らしているのに、何故かアイドルの櫻井さんを重ねて
これ幸いと
この立ち位置にあぐらをかいている
罪悪感
そんな複雑な気持ちとはうらはらに
櫻井さんは
「せっかくの日曜なのに、この時間になっちゃってごめん。もう少ししたら仕事も落ち着くから、そしたらどこかドライブに行こう？」
といつものように優しい言葉で包んでくれる。
＊＊＊＊＊＊
連れてきてくれたのは
都心の高層ビルの上層にあるイタリアン
窓の外は
キラキラ光る夜景
どのくらいの人がこの光のもとにいるのかな？
どんな想いを持って過ごしているのだろう？
この光一つ一つに誰かの想いが込められているとしたなら
この夜景は
一体どのくらいの想いで出来ているの？
「━━綺麗━━。」
口から零れた言葉に
静かに寄り添ってくれる櫻井さんが
微笑んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 106人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：やわらかなあたま | 作成日時：2017年8月29日 16時
