本当の恋人～ars parallel world～ (ページ24)

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24 タイフーページ24

「結局、Aちゃんが入院中、カウンセラーらしいこと何もしなかったわ(笑)。」

頭をポリポリかきながら苦笑いをする大野先生は続けて

「だからさ、退院してからも定期的に来てよ。」

と言った。

「え？退院ですか？」

「知らなかった？二日後って聞いてるんだけど。」

「はい、何にも……。」

━━タイインナンダ━━

自分のことなのに、他人事のように聞こえるのは

この世界が、自分の世界ではないと認識してる私自身の問題なのか

はたまたこんな私の状況を腫れ物にさわるように扱う周りのせいなのか。

「でも。私はどこに行けばいいんだろ？」

ごくごく自然に

心の声が出た。

大野先生が

椅子の背もたれに体重を預けて天井を仰いだ。

「AちゃんはAちゃん。

……でしょ？」

私の方を見て微笑む大野先生。

「ケーキはモンブランが好きで、広い豪華な病室は落ち着かなくて、『タイフー』っていうアイドルグループが好きなAちゃんを、おいら知ってる。

以前の自分がわからなくても、今のAちゃんの好きなもの、嫌いなものの欠片を集めていったらきっとそれがAちゃん。
もちろん、以前のAちゃんもAちゃん。
たとえ今と前とでギャップがあったとしても、今の自分も以前の自分も何も否定しなくていいんだよ。」

大野先生の言葉がストンと私の心に落ちてきて
居心地良く広がった。

目がうるんで

溢れだしているのに

笑ってしまったのは

大野先生が

『ARASHI』を『タイフー』って間違えてたから。