18 『あの時』 ページ18
カズside
家が近所で同い年
物心ついた時にはもう隣にいた。
いつも隣にいて
「カズくん、カズくん」って
いつも後にくっついてきてた。
俺はそんなAのことを手下のように
「あれとってこい」とか
「こうしろ」「ああしろ」って
よく生意気に命令してたっけ。
Aはそれでも嫌がることもなく
俺の言うことを素直にきいてた。
そう
今でこそ(と言っても事故前だけど)強気でわがままなお嬢様だけど
Aは素直で控え目な子供だったんだ。
＊＊＊
大人しいAが中学生になると
目立つ女子グループのイジメの標的になってしまった
結構ひどいこともされてたみたいで
思春期真っ只中の俺は
イジメられてることを知ってたのに
積極的に関わることをしなかった。
そのうちに
Aは学校に来なくなった。
いや家から出られなくなったんだ。
イジメの原因の一端は俺にあるらしいって
後から聞いた。
お金持ちでただでさえ目立つのに
オレと幼なじみで仲が良いって。
それだけで。
Aは外にも出れなくなったんだ。
その時から
俺は今でも捕らわれてる
あの時オレが何かしてたら？
って。
両親の希望で高校時代は留学という形で地元を離れたA
大学入学に合わせて帰ってきた時には
派手で強気な
……そんな感じの
Aになってた。
イジメにあってた『あの時』の助けを求めるような表情が
さっき病室で
「ごめんなさい」と言ったAの表情と重なって
思わず抱きしめそうになった。
でも
踏みとどまったのは
オレには
もう
そんな権利はないから。
せめて
Aの望むことを叶えることが
俺の贖罪だと
そう思ってる。
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作者名：やわらかなあたま | 作成日時：2017年8月29日 16時
