81 ページ33
沸かしたての湯を注ぐと、部屋の中に甘い香りが広がる。
その後ろ姿を眺めながら、家でもこういう時間があればな、などと短絡的な考えを繰り返していると目の前にカップが運ばれてきた。
自身でもポアロや家で紅茶を淹れるが、彼女の紅茶というのは、なにか特別なものをはらんでいるような錯覚に陥るほど雑味がなく美味しい。
感想を正直に伝えると、
ぱあ、と花が咲いたように笑った。
――この笑顔に、どうも弱い。
紅茶や店のことを褒められた時の顔は心から輝いていて、 …まあ、もう少し自分のことも大事にしてほしいのだが。
それもまた彼女らしいな、と思う。
「ていうか、連絡くださればこちらから伺いますのに…」
卸す側なのだからお届けに行きますよ！と主張している。
こちらとしてはポアロの常連客に見られながらも面倒だし、一対一で話せる方がいいので遠慮しておいた。
(それに、こちらに来ないと仕事してる姿は見られないし、紅茶も飲めないからな)
それを"安室透"の言葉に包んで伝えると、分かりやすい反応を返してくれた。
「もう、安室さんはすぐそういうこと言う…。こういうのあんまりポンポン女性に言うたらあかんのですよ」
つん、と肩をつつかれる。
彼女の方からアクションを起こしてきたのは初めてだったので、少し驚いた。
でも、参ったな。
ポアロでの接客を見られているせいか、完全に軽い男だと思われているようだ。それは困るので、軽く弁解をさせてもらう。
「――本当に、素敵だと思ってますよ」
少し本音も混ぜ込んで。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 98人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
枝豆(プロフ) - ゆあななさん» コメントありがとうございます！そう言っていただけると励みになります、頑張りますね！ (2018年5月24日 12時) (
レス) id: 12c730cb67 (このIDを非表示/違反報告)
ゆあなな(プロフ) - いやもうほんと、すごく面白いです！！頑張ってください！！ (2018年5月23日 22時) (レス) id: 6443c029d8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：枝豆 | 作成日時：2018年5月15日 12時
