仕事~238 ページ48
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人間の辿り着けない異界で、“道案内”の情報整備をしていた上司がふと顔を上げた。
上司「……え」
突然、愛しの部下の気配が薄くなった。
上司「まって、どゆこと、ねぇ」
言霊を発する前に、もう一人の部下から切羽詰まった様子で送られてくる。
《ボス、マイフレンドの気配が…！》
上司「《わかってるわよ！ そっちこそ何か知らないの！？》」
《…あいつ、任務中なんだ。もしかすると》
上司「《もしかしなくてもそれが原因よ！ 完全に消えたら洒落にならない、今すぐ確認してきて！》」
《今管理局向かってるっての！
……ボス、少し前にあった“平安京”って覚えてるか》
唐突な問いかけに、上司は虚を突かれた。
上司「《なによいきなり…千年といくらか前の都でしょ…？》」
《ボスは、その都の中核だった内裏に入ったこと、ある？》
当時を思い出した上司は、いくらか冷たくなった言霊を投げる。
上司「《……あるわけないでしょう。あの地獄にどれだけの同業者が苦しんだと思ってるの。
内裏だけじゃない、あの頃の都はありとあらゆる宮殿に結界が張ってあった。あなたも苦労したでしょ》」
《……もし、その内裏に入ってしまったら、俺たち天使は“消滅”するか…？》
霊体をとっていた上司の肩が跳ね上がる。最悪の予感が胸を締め付け、動揺を隠すこともできずに言い募った。
上司「《ねぇ、さっきからなんなの、それが愛しの部下と関係あるの》」
それからいくら問いかけても、部下から言霊は返ってこなかった。
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本丸管理局は、お世辞にも広いオフィスとは言えない。しかし
青年「……熙さん？」
目の前に座っていた青年が、心配そうな面持ちでこちらを窺っていた。
熙「あ、ごめん、ちょっと」
青年「手紙ですか、それ」
熙「うん、祖父から。…今、だいぶ厄介な任務の指揮を任されていて、その任務と関係する手紙なんだけど…」
目元に険をにじませた熙の耳朶に、扉の割れんばかりの音が届く。
漣「熙！ いるか！？」
身を硬くする青年を手で制し、熙は立ち上がった。
熙「一回休憩しよう。君はここにいて」
応接室を出て、熙は深呼吸する。
手紙を背後に隠し、覚悟を決めてオフィスの扉を開けた。
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作者名：葛の葉 | 作成日時：2021年2月22日 1時
