仕事~217 ページ27
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引き攣った悲鳴を上げ続けている祥子の異変に、鶴丸たちは気づいていた。
身の内に侵入した化け物が荒れ狂っているからだろうか。しかし同じように化け物を宿していた晟麻は、それほど苦痛を感じていたようには見えなかった。
祥子「……たす…け…っ」
悲痛な声で哀願してくる祥子は、片時も鶴丸の腕を放さない。そのあまりの力の強さに、鶴丸は不穏なものを感じていた。
小狐丸「中宮、どうされた…？」
厚「なぁ、これ、本当に大丈夫か」
小狐丸も中宮の傍らに膝をつく。厚が隣に立つ加州を見上げるが、彼にも判断はつかなかった。
祥子「…おね…が……たす……！」
ふいに祥子は、魂が抜け落ちたような
「……いたい」
「どうして」
「わたしたちがなにをした」
「ころさないで」
「うらみを」
「ほろぼせ」
「ふじわらのちなど」
「すべてころせ」
「ころせ」
「ころせ…！」
幾つもの声音が祥子の口から迸る。それは全て暗い怨嗟の念に彩られて、絶え間なく発されるのだった。
ひとしきりそれが続くと、今度は祥子自身の声が耐え難いほど激しい苦痛を訴える。
茫然とそれを凝視していた彼らは、怖気立ったように互いを一瞥した。
加州「何が、起きてるの…」
厚「まさか化け物が喋ってるのか？ でも“私たち”って、何なんだ？」
鶴丸は首を横に振る。
彼には中宮の口から発される幾つもの声が、化け物ではない、別のものに聞こえていた。
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駆け出したAの腕を、膝丸が咄嗟に掴む。
膝丸「A」
『離してくれ、早く中宮を見つけないと手遅れになる…！』
声を上げて手を振りほどこうともがくAの前に、薬研が回り込んだ。
薬研「A、いったん落ち着け。どういうことなんだ」
青江「晟麻は、渡来の妖を自身に取り込んで力を得たんだったね？」
『そうだ。だが単に取り込んだだけではなかった。
晟麻が行ったのは、巫蠱の中でも最もおぞましい、
青「起屍鬼…」
Aは、唇を噛んだ。
『共食いをした羅刹を取り込んだ自分の体内で、同じように死霊を共食いさせて、おぞましい力を持つ化け物に成長させる。
＿＿＿＿＿奴は、皆殺しにされた一族の魂を、巫蠱の材料に仕立て上げたんだ……！』
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作者名：葛の葉 | 作成日時：2021年2月22日 1時
