仕事~215 ページ25
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膝丸「………！ 戻ってきたようだぞ」
薬研「ようやくか。さぁて、どの部隊だ…」
膝丸に呼ばれた薬研たちが簀子に出る。本丸を包む夜の空気は、珍しく静けさに満ちていた。
それもそのはず。今、本丸にはたった数振りしかいないのだ。
膝「帰還したのは兄者の部隊だろうか」
薬「にしては人数が…」
門から姿をみせた人影に近づくにつれ、薬研は無意識に駆け足になっていた。共に来ていた一期も後に続く。
薬「A！」
一期「A殿…乱…っ」
薬研は青江に抱えられた乱を見てすぐさま容態を確認する。目立った外傷がないことを確かめ、ほっと息をついた。
青江「少し、瘴気にあてられてしまってね」
『…すまない……』
青江から事情を聞き、一期はぐったりと瞼を閉じている弟に腕をのばして抱き上げた。
そして項垂れるAに優しく微笑んで、首を横に振る。
一「どうか謝らないでください。…A殿も、ご無事で本当に良かった」
後から来た石切丸が、彼女の頭にふわりと大きな手ぬぐいをかけた。そこでようやくAは、雨に打たれて身体が冷えきっていたことに気がついた。
石切丸「向こうは雨だったんだね。夏といえど、濡れたままでは風邪を引いてしまうよ」
薬「気が利くぜ旦那」
一期は一際大きな布を受け取り、乱の体を包み込む。その横で青江が、髪を拭きながら石切丸に向き直った。
青「詳しく話したいところだけど、その前に石切丸さん、Aと乱くんの
修祓とは祓い清めることである。
青江の言葉に、石切丸は窺うような視線をAと乱に注ぐ。じっと目を凝らすと、乱の全身を薄く黒い膜が覆っているのが見てとれた。
瘴気だとわかったが、彼が元々身に纏っていたAの霊力で編まれた衣が、その瘴気のほとんどを浄化しているのも見てとれた。
消えかけてしまっているが、衣のおかげで彼はこの程度で済んでいるのだ。
石「もちろんだよ。一期さん、乱さんを神殿に運んでもらえるかな」
一「かしこまりました」
石「Aも、一息ついたらおいで」
青江の頼みを快く了承した石切丸は、準備のため一足先に神殿へと向かった。
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作者名：葛の葉 | 作成日時：2021年2月22日 1時
