仕事~204 ページ14
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よどんだ空気に満ちており、随分荒れ果てた建物だ。調度類も何もかも、埃をかぶっている｡
『ここは一体…？』
よく見れば、三人とも必要以上に警戒している様子だった。
長谷「わかりません。ただ、結界から弾き飛ばされ、気づけばこの荒れた廃墟にいました」
乱「小さな集落だったみたいだけど、どこも崩れ落ちてて、ここぐらいしか休めそうになかったの」
Aは外に出た。小さな家が、数軒寄り添うように建っていたようだ。
その向こうに、ひときわ大きな屋敷と呼べるものがあった。かなり荒れていたが、辛うじて元の姿を留めている。
その屋敷を見たAの心臓が、どくんと跳ねた。
この感覚は、馴染み深い。
死があった場所には、特有の“気”があるのだ。
三人は屋敷を見やって険しい顔をした。
青「…あまり、近づかないほうがいい」
『ああ。…だが』
確かめなければならないものがある。
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晟麻は、闇の中で微動だにしない小さな影を眺めやる。作り物めいた表情の祥子は、瞬き一つせずに端座していた。
彼女が何を思い何を見ているのか、晟麻は知らない。ただ愚かだと蔑むだけだ。
浅はかな思慕に囚われて、歩まねばならない道を見誤ったのは、この娘自身なのだから。
晟麻の体内で、時を追うごとに衝動が強さを増していく。もうじき彼は自身を失うのだ。
晟麻「……羅刹…もうじきだ…」
晟麻の体から、黒い影がゆらゆらと立ち昇る。
それは、一族が伝えていた甕に封じられていたもの。大陸から渡ってくるときに、どうしても捨てることができず、命懸けで持ってきたものだ。
先祖が封じた恐ろしい魔物。決して解放してはならないと、伝えられてきたもの。
晟麻はそれを解放した。一族の恨みを晴らすために。
一族の者たち自身に、その恨みを晴らさせるために。
晟麻は天を睨み付け、凄絶に笑った。
晟麻「待っていろ、藤原。虫けらのように我ら一族を
* * *
待っている。
だって、彼は約束をした。
守ってくれると、約束をしてくれた。
こんなに恐ろしいところに連れてこられてしまった。
前よりもっと恐ろしい目にあわされる。
でも、大丈夫だ。
彼は必ず来てくれる。
彼女ではなく、わたくしのもとに。
* * *
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作者名：葛の葉 | 作成日時：2021年2月22日 1時
