みえないモノをみる。 【文スト】

敵と己＿＿弐 ページ42

「……きゅう」

『……あー、恐いのか？』



小さく腕の中で鳴き声を上げたアライグマ。

動物は霊などに敏感だと云うし、私に怯えているのかもしれない。だが私は動物などが好きな方である、どうせなら懐いて欲しい。

……いやでも誰が飼い主なんだ。流石に野生はないだろ。



『うーん、迷子のアライグマを如何しろと……？』


「か、カール！」

『ナイスタイミング過ぎてわろた』



ぱたぱたと走って来た少し髪が長めの男性。目は前髪に覆い隠されてほとんど見えず、もごもごと何かを云う。

んー？ と私が耳を傾けると、腕にいたアライグマ……じゃない、カール君がぽんっと彼の肩に飛び乗った。



「お、おぉカール……！ やっと我輩に懐い、痛っ」

『あはは……それ私から逃げたかっただけだと思うよ。君がこの、カール君の飼い主かな？』



「そ、そうである」と云った彼は、震えるカール君を撫でながら私に視線を送った。

……ん？



『──あぁ！ そうかそうか、こりゃ失敬。まだ名乗っていなかった。小野凛だ、先程フィッツジェラルドから船乗の許可を頂いた。宜しく頼む』

「オノ……まさか、あのオノ殿であるか？」



数歩後ろに下がって問う男性。

んー、あのっていうか……他にどのオノがいるかは知らないかな、と素直に答える。いや決して友達が少ない訳ではない。客観的事実として名が知られているオノは知らないということである。



「そ、そうであるか……。ちなみに先程許可を頂いたというのは？」

『先刻フィッツジェラルドに一発ぶちかましたら好きにしろとういうお言葉を貰いましたー』

「……」



さらに数歩後ろに下がって無言になる男性。あれデジャヴ？

私が一歩前に出ると、彼も一歩後ろに下がる。す。すす。



『いや磁石か！』

「ひぃっ！」「きゅっ！」



ビクビク怯える一人と一匹。何ですかそんなに私が怖いですか。


＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

アライグマの鳴き方わかんねえ。
それと後三日でクリスマスだね！ ちょっと早めにメリークリスマス！！ ははは！

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