みえないモノをみる。 【文スト】

探偵社にて＿＿壱 ページ2

『オラオラァ！凛様が戻って来たぜェ！』



そんな声が、白昼の探偵社に響いた。無論声の主は私。

シーンとした探偵社。え、何この沈黙。待ってクソ恥ずいんだけど。皆真逆私の事忘れちゃった？待って泣きたい。


よくよく探偵社を見渡してみると、見知った顔が全く居な……いや麻衣居るじゃん。



『おい、おい麻衣！ 私だよ！ 私！ 小野凛！ 忘れたか!? 嘘だろ泣くぞ私！』

「え、あ、え……あっ、凛さん!?」

『そーだよ凛さんだよー！ 何だよお前憶えてんじゃねェか！ クッソもうちょっとで泣く処だったぞ私！』



あ、ちなみに此の子は谷山麻衣ね。私が昔探偵社に入れてあげたの。事務員だけどな。

麻衣はぱあっと目も顔も輝かせ、ガタッと席を立った。



「きゃーお久し振りです！ 三年振りですか!? 又戻って来てくれたんですね！」

『やだもう麻衣優しいー！ 大好きー！ 御土産もあるぜー！』

「えーっ!? やったー！ ありがとう御座います！」



周りはポカンとしている。そりゃそうか。説明する気は更々ねェが。



『麻衣、事務員の皆は？』

「あー、今丁度古株の方達が席を外してるんですよ」

『他の皆は？』

「太宰さんと国木田さんが居ませんが、他の皆は居ますよ」

『行って来る』

「はい、行ってらっしゃい！」



ぐすぐすとし乍ら麻衣と別れる。やっぱり麻衣は私の癒しだ。可愛い。そして優しい。マジ完璧。










「ねぇ、麻衣さん……今の人、誰？」



あたしが久し振りに凛さんと逢えた余韻に浸っていると、隣の事務員さんが声を掛けて来た。



「小野凛さんです。三年前、あたしを此処に誘ってくれたんですよ。命の恩人です」

「ああ、彼の人が！ ──とっても美人さんじゃない」



あたしはこくこくと激しく首を動かした。そう、本当に凛さんは綺麗なのだ。女のあたしでも、一瞬見惚れちゃうくらい。

今度はずっと此方に居てくれるのかなあ。又直ぐに海外に行っちゃうのかなあ。



「はぁー……」



又凛さんが居なくなるかもしれない日々を思うと、あたしの口からは自然と溜め息が出た。

探偵社にて＿＿弐→←序章＿＿壱

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す