みえないモノをみる。 【文スト】

綾辻探偵事務所にて＿＿肆 ページ9

やべぇよ、お兄ちゃん如何考えても可笑しくなっちゃったよ……！



『ちょっと真面目に離して欲しいです』

「そうか……別に離してもいいが、俺はとある情報を持っているんだ。離したらそれはもう喋らないぞ」

『情報？』



黒社会において、情報程大切な物はない。……あっいや間違えた、黒社会なんて云ってない。

ともかく情報と云うのは、何よりも大切な物だ。お兄ちゃんはそれを判って私に云ったのだろう。



『……どんな？』

「京極夏彦についての情報だ」

「綾辻先生ッ!?」



夏彦さん、と云い掛ける口を無理矢理抑えた。夏彦さんはお兄ちゃんの敵だ。



『……このままで、いいです』

「ふむ。素直なのはいい事だ」

「ちょっと、綾辻先生!?京極夏彦の事は＿＿」

「安心しろ、辻村君」



彼女は何もかも知っている。

お兄ちゃんが私の髪をすき乍ら云った。



「では教えよう。京極夏彦は、俺の永遠の宿敵だった彼奴は＿＿死んだよ」



しんだ、シンダ、真だ＿＿。

その音が私の中で漢字に変換されるまで、かなりの時間がかかった。



『……ぇ？』

「綾辻先生、機密情報をそんな軽々と＿＿！」

「何ヶ月か前にな。君への伝言も預かっている」



伝言……？



「娘のように思っていたよ。綾辻君、彼女を大切にしてやれ。＿＿彼奴の言葉を伝えるのは癪だが、慥かに伝えたぞ」

「娘のように……って、凛さん京極とも知り合いだったんですか!?」



深月ちゃんが驚いたように云うが、私の耳には入らない。

え？夏彦さん、死んじゃったの？でも＿＿。




＿＿夏彦さん其処に居るんですけどォォォ!!?




私の目には、お兄ちゃんの後ろで楽しそうに哂う夏彦さんが、確りと視えていた。

綾辻探偵事務所にて＿＿伍→←綾辻探偵事務所にて＿＿参

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す