みえないモノをみる。 【文スト】

ちびっこ蛞蝓と相対＿＿弐 ページ27

『おいちびっこ蛞蝓』

「ザケんなぶっ殺すぞ」

『ん、ん〜？ 何て云ったのかなあ？』



私がニヤニヤし乍らスマホをチラつかせると、中也は「糞が……」と忌々し気に吐き捨てた。

あーっはっはっは！ 人を弄るのがこうも愉しいとは！ 久々の感覚だねえ、あっはっはっは！



「……手前今ちょっと笑わなかったか？」

『何を云っているんだい中也君私がそんな事する訳ないだろう』

「よくノンブレスで云えたなそれ」



中也の的確な突っ込みも久々だねえ。私は白々しく中也が来る前に買った午後ティーを飲んだ。美味。

中也はジト目で私を見たが、私の華麗なるスルー力を見ると舌打ちして帰りの準備を始めた。



「……あ、そうだ。手前、今七十億の懸賞金を懸けられてる人虎を知ってるか？」

『へえー、七十億！ そりゃあ凄いね。知らないかな』



私が肩を竦め云うと、中也が再度私をジト目で見る。おう、何だよ。



「……手前はホント息をするように嘘吐くからな。嘘か真か確かめただけだ」

『嘘とは酷い！ 何せこの世は欺瞞だらけじゃないか、私は何時だって自分の本心に嘘は吐かない』

「もう既にそれが嘘だけどな」



やっぱり手前は天性の詐欺師だ、と中也が云った。褒められてる気がしないが、事実褒められてはいないのだろう。



「じゃあな」

『まったねー』



中也がドアを閉めた。部屋を見渡すと、何故だか不意にがらんとした様に感じる。……まあ、別に関係ない。



『いやーしかし、あの子が七十億か……一生遊んで暮らせるな』



……ハッ！ 危ない危ない、金に目が眩む処だったぜ。

と、いきなりスマホの着信音が鳴った。んだよ吃驚させるなよ！



［あ、えと、もしもし……］

『ん……？ ああ、潤君かい？』

［あ、凛さんでしたか！］



一瞬誰だか判らなかったが、すぐに潤君の声だと思い出す。一瞬、疑問の声が心の中を掠める。

──彼に電話番号教えたっけ？



［太宰さんがこの番号にコレを伝えてくれって……えと、読み上げますよ？］

『……うん、いーよ！』

［ga63aB11ee95ac250bc52bb44gb51、面白いモノが見られるよ♪ って、書いてあります……何ですか、この意味不明な文字の羅列は？］

『……ええーマジで？ めんど……あ、御免潤君。それはただの暗号だからすぐ解けるよ』

［え、暗号!?］



マフィアの牢獄に来てみな、面白いモノが見られるよ。

一体彼奴、何企んでやがる？

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