35話 ページ36
宗三が小夜をおぶったのを確認してから歩き出した。本当は横を歩いてやった方が色々サポートしやすいから、そうしたいのだが…
…宗三から此方に対する険悪感のオーラがヒシヒシと伝わってくる為、やめておいた。前を歩けば後ろから睨むような突き刺す視線がさしてくる。
そんな状況に軽くため息を吐きながらもやっとの思いで本丸に着いた。大門を開き、玄関となる引き戸を開く。
「…あぁ、買い出しお疲れ様です、審神者はん。…って、今回はどうしはったんです、そんなすごい状態の人達引き連れて…連れ去ってきたんちゃいますよね?」
「違う。アタシが連れ去るワケあるか。買い出し途中に性根の腐った審神者を見つけたモンだから、せめて手入れだけでもと思って連れてきたンだよ。手入れ部屋、開けといてくれるよう一期に言ッといてくれ」
くぁ、と気怠げそうに欠伸した明石がそこにいた。明石は引き戸が開いた事を確認すれば立ち上がって出迎えてくれる。…が、その後ろに来た宗三と小夜を見ては驚いたように目を見開いた。
けらりとふざけたような口調だが、その実声色は真剣。ピンヒールを脱いでは本丸に上がりながら明石に手入れ部屋を使えるよう言伝を頼めば「はいはい、承知したでぇ」と早歩きに奥へと引っ込んだ
「…さて、ほら、上がりな。一応手入れはするさね。その後、どうするかはアンタ達二人で決めな。その決定に関してはアタシは一歳口出ししないよ」
まだ上に上がっていない宗三に手招きをすれば、無言のまま上がってきた。ひたり、と裸足の音が廊下に響くなか、やけに手入れ部屋への道のりが長く感じた。
角を曲がり、ついた手入れ部屋。からりと障子を開ければそには正座して器具を整えている一期の姿があった
「主、お帰りになりましたか。先程明石殿より言伝を受け取りまして、今、準備が終わりましたよ。」
ニコリと笑みを浮かべながらそういう一期の姿に少し安堵した。
あれほど荒んでいた精神状態も、矢張り戻ってきているらしい。同僚から聞いた「ロイヤルスマイル」とはこの事か。なるほど、理解した
「ん、ありがとねェ一期。後で博多戻ってくるだろうから、お出迎えお願いしてもいいかい?」
「承知」
深々、頭を下げては出て行った一期の姿を見送ってから手入れ部屋の中に座した。
先ずは…怪我の酷い、小夜からだ。
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ガーベラ - はじめまして!課長様、姉貴肌ですね〜。こんなお姉ちゃん欲しかったな〜。続き楽しみにしています!これからも更新頑張ってください! (2020年11月28日 20時) (レス) id: cdc708129e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:病蛟 | 作成日時:2020年7月12日 17時