隠し事。

持ち主 ページ2

『うおわああああ』

今のこの状態、人間でいうと、
巨人に捕まれているってとこ。


人間とはデカイもんだ。
このクマの人形はそう思った。


半端ない威圧感。
半端ない力。


『痛いよ！もっと優しく掴め！』

どうやったって、心の声は
届いてはくれない。

状況を把握したところで、
自分でどうにかできることではない。

『自分よ、幸運を祈る』


人間には届かないから
自分に話しかけた。
アホなことだと知っていながら。

『仲間たちよ、さようなら』


もう、2度と会えない仲間に、
心の中で別れを告げた。


その瞬間。


自分を持っている人間が、
「よろしくねーーっ」
と言った。



『パ、パワフルや』

よくみると、でかくても子供。
そうか、クリスマスだったな。
サンタさんからのプレゼントってわけか。


クマの人形は理解した。



あの紙はプレゼントの包み紙。



この人間はこの家の子供。

『まぁ、嬉しそうだし、ここも
　悪くないかも』
そう思った直後。


「チェリーちゃん！！」

『ちぇりーちゃん！？』


思わずツッコミを入れる。


自分にはちゃんと名前がある。


相手は、楽しそうに
「チェリーちゃん！」
と、ずっと自分に話しかけている。



『………こりゃ、大変だ』

自分の名前を、勝手に付けられた……。

今まで店で別れてきた仲間たちに向けて
『お疲れ様です』
と思った。

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