夕焼け小焼け【緑さんメイン】 (ページ8)

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双子ページ8

寒空の下、和也のクラスはマラソンをしていた。

和(あぁあ、何でハンバーグに釣られたかなぁ…。)

１限から体育の授業で、ただでさえやる気の起きないマラソンに、よけいやる気を無くしていて、見学すら考えたのだが、今朝双子の弟に釘を刺された。
思い起こせば数十分前。
一緒に登校してきた潤に、教室に入る直前で言われた。

潤『あ、和。今日の１限体育、マラソンなんだろ？』
和『あぁ、そうらしいね。』
潤『お前のことだから、大丈夫だとは思うけどさ。今日の夕飯ハンバーグだからな？もし、風邪気味とかで見学してみろ？お前の夕飯はお粥にするからな！』

そう言うと、潤は自分のクラスに入って行った。

兄弟で一番料理が上手いのは、唯一の弟。
そして、毎日の食事を準備しているのも、この弟。
自分の大好物のハンバーグをちらつかせて、マラソンに参加させようとしている腹黒さ丸見えなのも、あの弟。

ちらっと、校舎を見上げれば、窓際の席からこちらを見ている、弟と目があった。
軽く睨みつけると、爽やかに手を振られ、イライラが募る。
ハンバーグに釣られた自分と、暖かい部屋でぬくぬくしている弟に。

無事に授業を終え教室に戻ると、廊下の壁にもたれて立っている潤がいた。

潤「よ、お疲れ！」
和「本当ですよ…ちゃんと走ってきましたからね！！夕飯のハンバーグ、チーズを乗せてくださいよ！！」
潤「大丈夫、分かってるよ。」

爽やかに笑う潤と別れて、教室に入る。
２人が通う高校は、自宅から自転車で３０分程の距離にある。
小高い丘の上にあるので、行きは辛いが、帰りは楽だ。
智と雅紀も、この高校に通っていた。
翔だけ、電車で少し離れた進学校に通っていたのだ。

去年までは、雅紀もいた。
バスケ部のキャプテンを務め、毎日がとても充実しているように見えた。
唯一の欠点が、身体が丈夫でないことで、その身体能力はずば抜けていた。
帰宅部の２人は、よく体育館をこっそり覗いて、兄の姿を見ていた。
…が、それも今となっては、もう出来ない。

放課後、２人は一緒にスーパーに寄った。
それが、最近の日課となっている。

和「…まーくん、今日ご飯食べられますかね。」
潤「ん～、微妙だよな…今朝の様子だと。」
和「グラタンでも作りますか？」
潤「そうだな…って、作るの俺だけどな。」
和「まぁ、僕も手伝いますから。」