冒険３ ページ38
無事に一学期も終わり、双子はいつも通り帰宅途中にスーパーへ寄り、雅紀がアルバイトをしている店を覗いた。
いつものカウンターにいる姿は、元気で明るい雅紀そのもので、二人は安心して自転車をまた漕ぎ始める。
潤「…あの姿が見られるのも、後半年だな…。」
和「ん、でも、半年後には家で同じような姿が見られるんだから。」
潤「そうだな。」
決して、本人の前では言わないけれど。
すぐ上の兄が、二人の中では「格好良い兄貴」なのだ。
それは、上の二人の兄とは違う格好良さ。
夕方、元気な声とともにその兄が帰ってきた。
雅「ただいま〜！！」
リビングに雅紀が入ってくると、ごろが走り寄り、雅紀が手にしていたビニール袋に顔を突っ込んだ。
雅「あ、ごろちゃん！ダメだよ。」
雅紀が袋を頭上に掲げると、ごろは「それを、ちょうだい！」と言わんばかりに、ジャンプを繰り返す。
…が、当然、届くはずはない。
潤「まー、それ何？」
雅「これね、兄ちゃんからのご褒美なんだ。」
和「…ご褒美？」
雅「そ、一学期もよく頑張りました！って、ご褒美。あ、もちろん和と潤の分もあるよ〜。」
やったーっ！と喜ぶ弟達を見て、雅紀の頬が緩んでいると、後ろから声が聞こえた。
智「…いいなぁ…おいらも、頑張ったのに…。」
振り向けば、そこには目に涙を浮かべ、じっと袋を見つめる智が立っていた。
どうやら、必要な物を取りに来た智氏が、階段を降りる直前に弟達の会話が聞きつけたらしい。
雅「あ、智兄、ただいま！大丈夫だよ、兄ちゃんはちゃんと智兄と翔ちゃんの分もくれているよ！」
智「よっしゃ〜！よし、仕事やる気出てきた。あ、雅紀。お帰り！翔ちゃ〜ん！！」
鼻歌を歌いながら、階段を降りていく智に、雅紀は一瞬寂しそうな目をしたが、双子は従兄がくれたご褒美の中身が気になって、雅紀の表情には気付けなかった。
潤「ね！まー！兄ちゃんからの、ご褒美って何？」
へへーん！と、胸を張る雅紀。
和「あ、分かった！」
雅「お、分かった？そう！Matu cafe名物、一日限定５０個生産のシュークリームだーい！！」
和也と潤は、待ってました！！と割れんばかりの拍手を送る。
弟達の笑顔を見た雅紀は、ちくりと胸の奥が痛んだ。
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作成日時：2013年1月31日 23時
