夕焼け小焼け【緑さんメイン】 (ページ39)

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冒険４ページ39

兄二人の仕事が終わるのを待って食べた、夕飯の後。
雅紀は、冷蔵庫からシュークリームを出してきた。
潤は、５人分のコーヒーを入れる。

お腹いっぱいご飯を食べた後とは言え、これは別腹。
何せ、従業員の雅紀でさえ、なかなか手に入れられない幻のシュークリーム。
箱を開ければ、甘い香りが漂い、その香りに誘われるかのように、手を伸ばす。

智「あぁ、やっぱ兄ちゃんのシュークリームは、うめぇなぁ…。」

しみじみと言う智の声が、やけに響く。
誰も何も言わずに、シュークリームを数秒で完食した。

翔「…はぁ、うまかったぁ…！」
和「本当、久々に食べたけど、相変わらず美味しいですよね。」
潤「どうやったら、こんなん作れるんだろうな。」
雅「ん～、俺も知らない。」

潤の視線を受けて、雅紀が答える。
そして、そうだ！と今思い出したかのように、雅紀が話しを続けた。

雅「智兄。俺、明日…ちょっと出かけて来るね。」
智「ん？分かった。」
翔「暑いから、ちゃんと帽子とか被って行けよ？」
雅「…うん、大丈夫。」

ふにゃんと笑う智と、母親みたいな翔。
和也と潤は、宿題の話をしている。

普段は居心地が良いこの場所が、雅紀は罪悪感でいっぱいで、居た堪れなくなった。

雅「…じゃ、ごめん。俺明日ちょっと早いから、もう部屋行くね？」
智「おぉ、お休み～。」
翔「おやすみ。寝冷えしないようにな。」
和潤「おやすみ。」

雅紀は、リビングを出ると、一目散に自室へ戻った。
後ろ手でドアを閉め、その場に座り込む。

兄弟の笑顔を見ていたら、自分がとてつもなく悪いことをしているんじゃないかという、罪悪感に襲われた。
今なら、まだ引き返せる。
智には「明日の予定、キャンセルになった」とでも言えば、大丈夫。

でも…。

雅「…ごめんなさい…。」

小さな小さな懺悔の声を、誰も聞いてはいなかった。

翌朝。
陽もまだ昇りきらぬ頃。
桜葉家の玄関が、静かに閉まった。