唯一の常識人だと思ってた奴が実はヤバいやつで女だった。 (ページ11)

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九話ページ11

「何故！！私を置いていくのですか！？貴方のためなら私は命を懸けられます！！」

「私にはもうお前など必要ない。殺しはしないから早くどこかに行ってしまえばいい」

「私も連れて行ってください！！！どうか！私の貴方に対する思いは他とは違います！！鯉登のように裏切ったりなどしません！！私は貴方さえいれば何もいらないのです！！」

月島と共に歩き出した鶴見中尉殿の後を追いかけ肩を掴むと月島に手を振り払われた。その時の私をちらりと見た月島の瞳の色にはこれまで向けられたことのない氷のような冷たい軽蔑の眼差しが込められていた。

二人は歩いていて私は全速力で走っているのに全く追いつかない。どんどんと距離が開いていき、真っ暗な暗闇の中へ背中も見えないほどに遠くに行ってしまった。

私は絶望の中絶叫し崩れ落ち、持っていた軍刀で己の喉元を＿＿＿＿

「はっ！！夢！？」

私はいつの間にか眠ってしまっていたらしい。だれかが運んでくれたんだな。

それにしても嫌な夢だった。全力疾走した後のように汗をたくさんかいている。

鯉登が裏切る？有り得ない。鯉登の鶴見中尉殿に対する忠誠心は私の次くらいにはある。それに私が鶴見中尉殿と月島軍曹に置いて行かれる夢．．．夢に意味なんてないだろう。考えるだけ無駄だ。疲れていればおかしな夢くらい見るだろう。

不穏な考えはノックの音に遮られた。

「沢木上等兵殿、入ります。」

一等卒か…

「よろしい、入れ」