唯一の常識人だと思ってた奴が実はヤバいやつで女だった。 (ページ12)

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十話ページ12

「何か用があってきたのだろう？どうした？」

部屋に入れたはいいものの一等卒はばつが悪そうな顔をしてずっと口を開かない。

「あの…誠に申し上げにくいのですが…その…尾形上等兵殿が造反しました。」

「ほう、それで？」

「え？とても仲がよろしかったのでもっと驚かれるかと思っていました…」

「別に仲良くはない。尾形もいつかはやると思っていたからな」

それに造反してくれたほうが正々堂々と殺せるしな。なんて心の中でつぶやく。

「尾形上等兵殿を隊のものが尾行しています。沢木上等兵殿も気分が良くなったら向かってほしいそうです。」

「嗚呼、わかった。準備が出来次第向かう」

「では俺は先に向かっております」

「あ、ちょっと待て谷垣は帰っているか？一緒についてきてほいんだが」

「まだ帰っておりません、噂だと尾形上等兵殿と共に造反したとか…代わりの者を用意しますか？」

「いや、いい」

「では失礼します」

一等卒が部屋から出ていき、準備を始める。

谷垣が造反者か…有り得ない話ではないが谷垣は真面目な奴だ。個人的にも気に入っていたので信じたくない噂だ。
マタギの出だったからか他のものよりも銃の扱いに長けていた谷垣は教えやすかったし、銃の腕もよかった。それに穏やかな性格と熊のような体格に何度癒されたことか。あちらからも尾形のいびりからかばってやった時から慕わていた。

だがしかし、谷垣が本当に造反していた場合は容赦はしない。鶴見中尉殿に仇なすものはいくら気に入りの隊士でも指示があれば迷わず殺せるような気概がなければ鶴見中尉殿にはついていけない。

でも心が痛むものは痛むのだ。どうか造反していないでくれ谷垣…