In the interspace of world and world

J ページ17

「…人間にしては
なかなか賢明な選択だな」


ふん、と鼻で軽く笑ったインブルが
傍まできた俺の肩を荒々しく掴む。


掴まれたところから流れ込んでくる
明らかな俺への憤怒と憎しみ。



怖い……


思わず身体が硬直した。

表情の変わらない面が
より一層俺の恐怖を掻き立てる。


「お願い…だ、みんなを解放する約束だったはずだ」


俺の口から出た言葉は震えていて。

情けないと思うと同時にもっと強くなりたいと感じた。


「…勿論。私は約束を守らないほど下等な妖ではない」


ただし…と響く冷たい声。


「お前は私と共に来てもらうよ」


つう、と肩にあったインブルの指が滑って
俺の首筋を撫でる。

それだけで背筋がすっ、と寒くなって
恐怖が俺を取り巻いた。


「…っ……」


「…まぁ、お前に選択肢はないけどね」


「…っ、ふざけんな!!潤を返せっ!!」


カズの怒鳴り声が響いて
俺の意識がはっ、と引き戻される。


「おや、貴方にはもっと酷い目に
あってもらった方がいいですかね」


さっきのカズの絶叫と、みんなが傷付く姿が
頭の中にフラッシュバックする。


駄目だ、それは、それだけは…！


「やめて!!行く、行くから……
カズたちをこれ以上傷つけないで!!」


カズたちの方にインブルが向けた手を掴んで
インブルの面の奥の目を必死に見つめて言う。


…俺が、護らなきゃ。


「…だそうです。
貴方がたの大事な人間は自分から私を選んだ。
……文句はありませんね？」


「てめぇ…卑怯だぞ！」


「では私はこれで」


その言葉と共にがっ、と頭を掴まれる。


何か言う暇もなく、俺の目の前は真っ暗になった。

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