運命の恋、拾われました

7.Iside ページ8

.




.




.




＿＿＿＿＿＿＿嘘、だろ？




収録が始まってしばらく経った時

今までページをめくるくらいしか動かなかった彼女が
ふと、天を見上げた


本に栞を挟んでテーブルの上に置き
そしてコーヒーカップに手を伸ばし、徐に立ち上がった。



.




.




テーブルに置かれたその本のタイトル＿＿＿＿＿＿

その挿絵＿＿＿＿＿＿




.




見間違えるわけがない

最近、何度も何度も読み返した本だから


普段、絶対に読まないジャンルの本だから



.



.



それでも読んでいたのは

今度、映画化することになったその本の
主人公役のオーディションを受けるから




.




.





まだ、映画化されることも公になってないんだから

絶対に偶然で


必然とか運命とか


絶対にそんなんじゃないのに、勝手に舞い上がる俺の心臓が
波を打つように動いた



.




.




彼女は立ち上がって初めて周りの異変に気付いたようで

カップを持ったまま暫く静止していた



.



彼女の事なんて全く知らないのに

キャー！とかワー！とか
顔を真っ赤にするとか、そんなんじゃなくて

ただただ訳が分からない、なその驚き方が


あぁ、彼女らしいな

そう思った。



.




.




.




暫く静止した後、オーナーと目配せをして
カウンターの中に入って行った彼女


淹れてあったコーヒーをカップに注ぐと、足早に元の席に戻って行った




.




彼女はソファに座りなおして暫くはコーヒーを飲みながらぼーっとしていた





.




.



.




収録中にも関わらず、彼女の逐一を知っているのは

収録に全く集中せずに、彼女を見ていた証拠



.




.




.




メンバー全員にあの時は冷や冷やした、と言われる


カメラマンさんにも、一人だけ全然違う方を見ているから撮りにくかった！と嫌味を言われる





.




.




この収録番組に俺があんまり抜かれていないのはそんな理由




.



そんな事、彼女には恥ずかしくて言えないけどね

8.→←6.Iside

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す