安堵する ページ7
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少し経つと養成所の授業があるサイクルに慣れてきた。
斎藤とは意外にも気が合い2人で作った初めてのネタを試行錯誤して磨いている状態。
次のネタ見せの場で講師に見てもらう事になっている。
「Aちゃん、またタバコ吸ってんの」
そして、タバコを吸わへん俺が喫煙所によく顔を出すようになったのは
Aちゃんに授業以外で遭遇できる唯一のタイミングやから。授業10分前に行けば絶対いると気付いてからは毎回会いにいく。それも俺のサイクルに組み込まれた。
「リリーくん、お疲れ〜!頑張ってるみたいやん」
「ネタ見せするからな、毎日斎藤と残ってるわ」
「ええね、楽しみにしてる」
短くなったタバコを灰皿に捨てて、
Aちゃんはまたタバコを咥えた。
もう一本分喋れると密かに喜ぶ俺はかわええなと自分で思った。
「Aちゃんも感想教えてな」
「ふふ、厳しいかもよ?」
「そやなかったら意味ないやろ」
それを聞くとAちゃんは満足そうだった。
ええとこ見せたいなあ、漫才見て笑うAちゃん、見てみたい。
それが俺の漫才ならどんなにええか。
「あ」
Aちゃんはぱふっと煙を吐いて俺を見た
「何?なんすか」
「リリーくん、女好きなんやったっけ」
「あーもう、それは自己紹介の時に…」
「相方好きになったらあかんよ」
俺の言葉を遮るようにそういうから少しドキッとした。一瞬、Aちゃんも俺の事もしかしてと思いきや
「なんでかコンビで付き合ってると面白くなくなるんよね、なんでやろ?」
Aちゃんは笑った。
あーはいはい、そうですよね。
Aちゃんは俺の事全然意識してないのわかっとるし。
「…恋愛はどうなんやろ、普通に、相方やなくて」
「んー、女遊びは芸の肥やしって言うし、ハマりすぎなきゃええんやない?」
ハマりそうな兆しもあるけども
間接的に好きになってもいいような許可が降りた気がして俺は安堵した。
そんなタイミングでAちゃんのタバコは尽き、また2人で教室に向かった。
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作者名:ぴぴ | 作成日時:2023年3月13日 14時