舐められる ページ13
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順風満帆
一路順風
万事順調
なんか中国語みたいやな。そのくらいポンポンと四字熟語が浮かぶくらいには順調で。
モリシと組んでからの俺は毎日授業よりもネタ合わせする時間の方が楽しかった。
波長が合うし、なによりお笑いに対する熱が同じで
月末に控えた現役生のライブにも期限の1日遅れで申請した。
呆れられてたけどなんとか通って、目標があるとなると養成所生活はまるで今までと違うものになった。
「あ、部屋借りてんのリリーくんやったんや」
ネタ合わせのために教室を借りて2人で話していたら、Aちゃんがヒョコッと顔を出した。
「あ、Aちゃ…」
「えー!晋太郎やん!わあやっぱ2人組んだんや」
晋太郎?あ、モリシのシの部分か。
え、名前で呼んでんの??
「俺が口説き落としましたわ」
「リリーくんちょろそうやもんな」
「チョロチョロのチョロっすよ」
仲良さそう〜な雰囲気で、俺はその輪に入る事ができなかった。全然入ろうと思えば入れたけど。
「遅くならないでねー」とAちゃんは言い残すとこの場を後にした。
「…名前で呼ばれてんの?」
「あー喫煙所で、話の流れでな。ああ、狙ってへんぞ俺は!」
あたふた焦るモリシは意外と義理堅いやつやなと思って、なんだか嫉妬する気も失せた。
タバコ吸わない俺より吸う奴の方がそりゃ接点多いよなあ。
「でもな、Aさんて下の名前教えんねん、なんでやろな。」
「え?」
「誰が聞いても教えてくれへんらしい」
リリーは知ってんの?と続けて聞かれて
頭を横に振った。
なんで俺には教えんねん。Aちゃん。
「なんで俺には教えんの?」
「だって嘘やもん」
喫煙所で2人きりのタイミングで聞いてみると
唖然とする答えが返って来た。
「へ」と変な声が出れば
「あははは、嘘嘘、私Aちゃん」
ケラケラ笑って、ほんま舐められとる。
「あーもう、ひど、傷付きましたわ」
「ごめんごめん、誰彼教えたらみんな呼ぶやろ。一応アシスタントは生徒と線引かなあかんからさ」
じゃあなんで教えんねん。俺に。
という顔を俺がしていたのか、Aちゃんは
「リリーくん、声綺麗やったからさ、呼んでもらいたくなってん。名前。」
と言った。
「…それもどうせ嘘やろ」
「ふふふ」
Aちゃんの思わせぶりは
嬉しいのに苦しい。
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作者名:ぴぴ | 作成日時:2023年3月13日 14時