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あああ、なんだか、
「やってしまった」という気分だ。
盛山さんはそのあと、少し気まずそうにして
「じゃ、それだけなんで、スミマセンお邪魔しました」
と、そそくさと出ていった。
なんていうか、別に悪いことしたわけでもないのだけど、盛山さんのあの微妙な表情が頭から離れない。柔らかい雰囲気がちょっとだけピリついて、思い出せば出すほど私の喉元をひりひりとさせる。
あんな顔にさせちゃうくらいだったら
彼が芸人さんだという事なんて知らなくて良かったなあなんて軽く思った。
美穂ちゃんは「名前!Aさんってっ!ええちょっと!認知されてるんですか?!」なんてきゃあきゃあ言ってたから
逆に冷静になって、
盛山さんには申し訳なかったなと思いつつ
仕事しよっ と、気持ちを切り替えた。
きっとこんな事がよくあって、盛山さんも辟易しているのだろう。
でもちょっぴり
盛山さん、虫歯になってまた来ないかなあって
なんとなく思った。
…
あのあと、
緊急応診や予約外の患者さんがいきなり何人か来たためかなり忙しくなってしまって
お昼ごはんもすっかり食べ忘れるくらいで
盛山さんの事もすっかり忘れていた。
つかれたなあ〜
へとへとで、駅まで歩いていると
ソースのいい香りが鼻を掠めた。
あ、たこ焼き屋さん。
いつもこの時間に通らないから知らなかったけど
お腹も空いたし、入ってみようかな。
たこ焼き、最近外で食べたりしてなかったし
すこしわくわくして昔ながらの暖簾をくぐって引き戸を開けると、おじさんの威勢のいい声が響いた。
「お姉さん、ひとり!?
やったら男前の横座らせたるわ!はい1名様ー!!」
おじさんに言われるがままカウンターに座る。
なんというかすごくフレンドリーなお店らしく
ボトルキープのついたお酒の瓶が並んでたり、お客さんとおじさんが仲良さそうに喋っている。
カウンターもひとりのお客さんが結構いて、確かにひとりで食べても寂しくないかもと納得する。
なんて思ってたら、隣に座ってる男の人が
「男前の隣にようこそ〜」
と話しかけてきた。
酔っ払ってるのかな、こういうノリも久しぶりだなあ、なんて苦笑いして
「どうも、美女です〜」なんて適当に言いながら彼の方を見たら
盛山さんだった。
「わは、ほんま、美女が来た」
少しお酒を飲んでるのか
顔が少し赤くて顔もにこにこして語尾がまあるい。
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天風あおい - ぴぴさん初めまして。今回の小説、盛山さんの魅力をこれでもかと詰め込んだくらいに素敵な小説で、読みながらキュンキュンしてました!本当の盛山さんも、きっとこんな感じなんだろうなって想像すると本当にドキドキしちゃいました。また読ませていただきますね! (2月10日 14時) (レス) @page43 id: ebcd75c8b8 (このIDを非表示/違反報告)
真央 - ぴぴさん初めまして、素敵な盛山さんにドキドキしながら読むことができました終わりが出た瞬間もう読めないって寂しく思いましたまた読ませていただきますねありがとうございました! (11月8日 2時) (レス) @page42 id: 815e84f626 (このIDを非表示/違反報告)
あゆ - ぴぴさん初めまして。ぴぴさんの書く小説を読んで、見取り図とニューヨークが更に好きになりました!どの物語も本人の特徴を凄く捉えていてめちゃくちゃときめきます…!休止中とのことですが、もしまたぴぴさんの作品を読めたら嬉しく思います♪ (9月2日 14時) (レス) id: 869ad398aa (このIDを非表示/違反報告)
ぴぴ(プロフ) - shiinonchanさん» いつも読んでくださりありがとうございます☻❤︎❤︎ものすごく理想の彼氏を私も反映させておりますゆえ趣味が一緒という事ですね!!!!そんな嬉しい事ばっかり言っていただけて嬉しいです(..◜ᴗ◝..)♩ (5月24日 9時) (レス) id: b6f7e28a9f (このIDを非表示/違反報告)
shiinonchan(プロフ) - こんな彼氏最高すぎます!❤︎なんかもぉ盛山さんがすごいリアルで本物の盛山さんもきっとこうなんじゃないかって想像できちゃうのですごく物語に入り込めて読んでて幸せです〜❤︎ありがとうございます❤︎ (5月21日 2時) (レス) id: ea4b977ca3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぴぴ | 作成日時:2023年2月15日 1時