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あ
店の中に入ると、あの涼しい風の正体はクーラーから吹いていた物だと判明した。店に入る前は店の看板に隠れており、一体此の風の正体は何だろうと不思議に思っていたのだ。謎が解けて少しすっきりした所で、又、辺りを見渡した。
何だか、何とも言えぬ気持ちが腹の中で踊っている。喉のすぐ其処迄来て、暴れ、踊っている其奴等の所為で、喉がとても擽ったくて笑ってしまいそうだ。
此処でラムネを調達しても悪くないかも知れない。商店街に有る、何時もラムネを買っていたスーパーは、未だ遠い。
其れに何だろうか、此の涼しさは。先程迄の汗が冷え、風邪を引いてしまいそうな程に余を襲って来る此の冷気は、絶対にクーラーの所為だけでは無い。不気味さすら感じる寒さだったが、今は何故か其れが心地良かった。
1回りした所でやっとお目当てのラムネを見つけた。如何やら1度見逃していたらしい。ラムネの飲料を模したケースに入れられた、丸いブドウ糖の塊達。スーパーで何時も買うラムネを手に取り、年寄りの居るカウンターへと向かった。
「75円です。」
値段もスーパーと全く同じ。丁度の金額を出し、年寄りから商品を受け取った。
店から出る時に、今度は余から会釈をすると、年寄りもにっこりと嬉しそうに笑って会釈を仕返して来た。
嗚呼、先程の天国が夢の様。外の暑さは全く収まっていない所か、少し酷くなった気さえしてくる。
又、熱中症になりかける前に、急いで戻らなくては。
気合いを入れる意味を込めて、先程購入したラムネを1つ口に放り込む。物も値段も味も全く同じ、今迄と異なるのは買った場所のみ。だと言うのに、此のラムネは少し特別な味がした。
さて、今日はどんな自 殺を試そうか。
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夏が恋しかったので、夏真っ盛りのお話を書きました。夏の駄菓子屋の、クーラーの所為だけでは無い、あの謎の涼しさは一体何なのでしょうか。
私は駄菓子屋のあの婆ちゃんの魔法だと思っています。
あ
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作者名:魑魅魍魎 | 作成日時:2022年1月9日 12時