尾浜くんに妥協されました！

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「じゃあ、元気でね。たまに顔出すから。」


寂しげに微笑み、私の頭をなでてくれる先輩。

その反面、これからに期待しているようなワクワクした熱を帯びている目をしているように見えた。



全く。別れのときだというのに、私は寂しさより先輩のその表情が美しいと思ってしまっている。


我ながら呆れるほど先輩を尊敬していて、大好きな人だったんだと自覚する。



やがて先輩は、朝日が登る東へと向かわれた。



『お、お幸せに...！』



先輩に聞こえるように大きな声で、私の今絞り出せる言葉を放った。



先輩はこちらを向いて手を振ってくれた。



















『流石先輩だ、もうあんなに小さい。』





誰も起きていない、登りかけの朝日が見えるこの時間は、誰にも共有することは出来なかった。




今日は私が4年生最後の日であり、先輩が学園を去る日だ。




これで6年生になるくのたまはいなくなった。


5年生も私含め、何人がなれるのだろうか。




『あーぁ...早起きしたから眠いな。』



ぐーっと上に伸びて、大きなあくびをした。



早起きは三文の徳と言うが、私にとって別れは徳なのか怪しい。



『...！あれは、』



正門に見えるのは濃い紫色の忍び装束。忍たま4年生だ。




忍たま4年生というと、先日おかしなやつがいた。



先輩目的で告白したのに、妥協したのか私でいいと言った。


今までそんな事なかったし、気づかれたこともなかったのに。



告白の返事は保留にしておいた。


先輩みたいに縁がありすぎてスッパリ切れるほど、私には縁がなかったからだ。



最後の進級試験だろうか、皆ボロボロだ。




今日中に、学園を去る者、進級する者が決まるのだろう。


きっと彼らは今日休み。部屋に戻って夜まで寝るんだろうな。





『まぁ、私には関係ないか。』


なんだが寝るに寝られなくなってしまった。勉強でもしようかな。






スルリと頭巾を取って、くのいち教室の塀を超えて中へ入った。


















「．．．早起きは三文の徳だったな〜...徹夜だけど。ふぁぁ...」




彼女が変なやつと呼んでいた彼は、遠目から目の下を黒くさせて彼女を見ていた。



「勘右衛門、早くしないと風呂が混む...」



同じく、眠そうに目をこすりながら風呂に行くことを催促する久々知兵助は、何も知らずに尾浜勘右衛門を風呂に引っ張った。

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