「さよなら」なんて言わないで【男主】 (ページ8)

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平凡な日(4) ページ8

zm視点

Aは早く解放して欲しいと言わんばかりな目で俺を睨む。
　先程から俺の腕の中で抵抗はするものの、俺にとってはちっとも痛くも痒くもないし、離す気もないので現状は一切変わっていない。
　後ろでコネシマとシャオロンが俺に文句を言ってくるのが聞こえる。きっとAを俺に取られて悔しいんだろう。
　まあ二人が一生俺に勝つことなんて出来るはずないから、一生Aは俺のやな！
　そんなことを考えていると、また笑みが溢れてしまう。

　こうしてAを自分の腕の中に収めていると、ーーとても安心する。

　一体いつから俺はこうなってしまったのだろう。

　初めは、弱っちくて武器も十分に使えないただの一般人のこいつが、なんでウチに入ってきのか疑問で仕方が無かった。
　上の奴らは、別世界から来た人間だから何か特別な力とかを持っているかもしれないので、それを使いこなせるようにさせろだ何だと言ってくるし。

　…それって結局使い捨ての武器にしたいだけやろ。
　別世界から来た人間だったらもっとウチとは違う、環境の良い場所に置いておくべきやろ。戦争のせの文字も知らん奴をウチに放り込まれたら、足手纏いになるだけ、俺は絶対に関わりたく無い。

　そう考えると、居場所も何も無いそいつに少しだけ同情してしまった。

「え～…急に呼び出して悪いんだが、今日からゾム、お前、新米兵の面倒みてくれんか？」

　任務が終わり、部屋で休もうと思っていた時、急に総統に呼び出されたので、何事かと思って固唾を飲んで此処に来たが、何だ。そんな事か。

「あ～いっスよ別に。どんな奴らなんです？」

　軽く返事を返すと、総統はホッと顔を緩めて、二枚の資料を引き出しから取り出した。

「助かる。これが二人の資料だ。見てくれ。」

総統から渡された資料には、経歴が細かく記された二人の新米兵についての情報が顔写真と共にびっしり載っていた。

「へ～新米兵にしてはやりますね」

　通常の新米兵だと二、三年はかかるであろう実績を、この二人は一年もかからずに取得していた。これは稀に見る逸材だ。教育し甲斐がありそうだ。

「うむ…それとなんだが…」

　総統は少しだけ口籠もりながら続けた。

「お前…つい数日前に別の世界から転生してきたっていう奴のこと知ってるか？」

　一瞬自分の眉がぴくりと上がるのを感じる。

「あ～…知ってますよ。…そいつがどうかしたんすか？」