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Epilogue of "FORM" ページ50




何年経っても、Aの記憶は褪せない。あれから4年が経って、Aがいない生活に慣れた。いや、正しくは無理やり自分を納得させて慣らした。
何度も考えた。何度も後悔した。俺たちはこんなことがしたかったのか、手放すことが本当に正解だったのか、と。



俺の世界にAがいないことがこんなにも虚しいことだとは思わなかった。色も味も匂いも音も感覚も全て失ったみたいだ。
考えても答えの出ない問いを考え続けても埒が明かなくて、いつしか考えることをやめた。俺は心に穴を開けたまま、毎日を過ごしていた。




そんなとき、高校の同窓会に誘われた。いるはずのないAの影を探したくて、藁にもすがるような思いで参加した。



「AAって、覚えてる?」

「あー、覚えてるよ。そういえば仲良かったよな、北山」

「…まぁな。今何してるとか知ってる?」

「詳しくはわかんねーけど、九州に住んでるとかっていう話だぞ」



その話を聞いて、俺はAの実家へ足を運んだ。



「…北山くん」

「Aさんのこと、聞きたくて来ました。不躾なのは承知です。でも、どうしても知りたいんです」

「ごめんね、Aから言わないでって言われてるの」

「前もそうやって、俺に何も言わずに姿を消したんです。今どこにいるかだけでも、教えていただけないでしょうか」

「……住所だけ、教えるね」









最寄りの空港から30分ほどの住宅街。ここに、Aが住んでいる。
本当は会って話がしたいけれど、おばさんの態度を見る限り俺とは一切コンタクトを取らないつもりなのだろう。分かっていたことだけど、胸がちくりと痛む。




少し歩くと公園が見えた。土曜日の昼過ぎ、親子連れも多い。




その中に、愛しい君はいた。




あのときよりも髪が伸びて、横顔が大人っぽく見えた。微笑む視線の先には




小さな女の子がいた。



自分の目を疑った。でもそこにいるのは確かに、俺に似た子供だった。俺たちは、ずっと一緒だったんだ。嬉しくて涙が出る。涙を拭いて、二人のもとに駆け寄ろうとしたとき、誰かがAの隣にやってきた。






薬指に光る指輪。それは、Aも同じだった。Aは、俺の知らないところで俺の知らない幸せを手に入れていたんだ。




嬉しい涙は、哀しい涙に変わった。





これが愛した代償なら





俺の代わりに、ここで誰か「痛い」って言ってくれよ。






まだ、君と一緒がいい。




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作者名:わ! | 作者ホームページ:http://twitter.com/mi2_lxxx  
作成日時:2018年10月18日 14時

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