One Kiss 22 ページ46
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いなくなろうって思ってた。千賀さんが来た日から2週間経ってもミツに会えなかったらそのままいなくなってしまおうと。だってどのみち、アイドルにスキャンダルなんてあってはいけないんだから。
あなたの恋人になれたなら、どれほどよかったんだろう。
あなたと本当に愛し合えたら、どんなに幸せだったんだろう。
ううん、私はあなたがいるだけで幸せだったよ。
だけどせめて、ここからいなくなる前に、一度でいいからミツに会いたかった。
積み上げた段ボールを見つめながらそんなことを考えていたらまた涙が零れそうになったから、微笑んでみる。
「さようなら」
「…なんで一人で勝手に終わらそうとしてんだよ」
目を閉じる。疲れているのかな。ミツの声が聞こえる。
「俺の気持ち考えたことあんのかよ」
心地が好い。その愛しい声で、私の胸はいっぱいになる。
こんなにも、好きだよ。
「聞いてんのかよ!」
肩を掴まれて目を開けると、ミツがいた。
ああ、泣きたくなんてなかったのにな。
「なんで、いるの?」
「なんでって、こっちが聞きてえよ。お前なんで勝手にいなくなろうとしてんだよ。意味分かんねえって」
「…私たち、たぶん無理だよ。うまくいかない。近くにいたら、ずっとミツのこと考えちゃうから」
「ずっと俺のこと考えててよ。それで、俺のそばにいろよ」
「ミツのそばにいたら私、壊れちゃうから。もう、壊れてるから」
「俺が守る。Aがいなくなったら俺何も出来ねえって、この前言ったろ?だから」
「ねえミツ、好きだよ」
何を言ったって変わらない。私がミツを好きなことも、好きでいる限り壊れ続けることも。いつだって私たちは平行線。
「……好き」
好きなんて、高校生ぶりに言ったな。
戸惑うミツの首に腕を回して、キスをする。息が苦しくなるくらいに求めた。
だって今日が最後だから。最後くらい、愛したっていいでしょ?
熱い吐息を漏らして唇を離す。切なげな視線を絡ませたら、今まで抑えていた愛しさが溢れてくる。堪らなくなってミツの胸に頭を預けた。
「……今までごめんなさい。ちゃんと愛せなくてごめんなさい」
「…謝んなよ。なんも、悪くねえじゃん……」
抱きしめあっていた。どれくらいそうしていたんだろう。ミツの鼓動が聞こえる。今なら死んでしまってもいい。
幸せな時は、今日が最初で最後。
「…愛してる」
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作者名:わ! | 作者ホームページ:http://twitter.com/mi2_lxxx
作成日時:2018年10月18日 14時