One Kiss 19 ページ39
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ミツから呼ばれなくなって2か月が経とうとしていた。このまま終われる。そう思っていた。
ひとつ変わったことは、千賀さんとご飯を食べる仲になったということだ。優しい彼は、いつも家の前まで送り届けてくれる。ミツがこの関係を知っているかどうかは、もう考えないことにした。そもそも連絡を取っていないんだから、ミツには関係のないことだ。もう、忘れたかった。
果てしなく苦しい気持ちを抱きながら彼のそばにいるなんて、やっぱり馬鹿だったんだ。この10年以上の間に何度も思ってきたことだけど、やっともうミツから離れられそうなところまで来ているのだ。
それは紛れもなく千賀さんのおかげだったけれど、千賀さんとこの関係を続けることでミツとのつながりを保っていたかったこともまた事実だった。離れたいと思いつつもこうしてミツの背中を追い続けている自分が一番馬鹿だ。
素直に笑えなくなったのはいつからだろう。もうずっと、心の底から笑っていないような気さえする。もう疲れた。いっそのこと、この環境さえ捨ててどこかへ逃げられたらいいのに。
苦しいよ。
じわりと涙が溢れそうになったとき、着信が鳴った。名前も見ずに応答する。
「……はい」
『えっ、Aさん、大丈夫ですか?』
「いや、あんまり……」
声色で変化に気付いてくれることが、嬉しかった。私は、同じことをミツに訊かれたら同じように答えただろうか?いや、できない。ミツの前では弱いところなんて見せられない。千賀さんなら、素直になれる。でもこれは、ミツに抱いている感情とは明らかに違う。
『俺、今からそっち行きます』
「え、急に、」
『絶対に動かないで、そこにいてくださいね。すぐ行きますから』
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インターホンの画面には鍔の広いハットを被った千賀さん。応答しないままエントランスを解錠すると1分もしないうちに呼び鈴が鳴った。
「…そんなに急いで来てくれなくてもよかったのに」
「だってAさんが心配だったから」
「だからって」
「本当に大丈夫ですか…?」
優しい声でそんなこと聞かれたら嘘なんかつけなくて。
「大丈夫……じゃないかも」
そこまで言ったら、さっきまでぐるぐる考えていたことが目の前に流れ込んできて視界が滲んだ。
「……そんなにミツが好きですか?」
だって、私の全部だから。
「俺だったら、絶対にAさんのこと泣かせたりしないのに」
千賀さんは崩れ落ちて泣く私の背を撫でてくれた。
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作者名:わ! | 作者ホームページ:http://twitter.com/mi2_lxxx
作成日時:2018年10月18日 14時