One Kiss 14 ページ29
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帰り際に囁かれた言葉が嬉しくて、もうそれだけで胸がいっぱいになる。けれどそれと同時に苦しくなる。ミツが誰にでもこんなことを言っているんだと思うと、優しくされるたびに私の心は壊れていく。
本当はもうバラバラになって直すこともできないのに、その優しさは一時的に私の心を癒す。癒しているように見えて破壊していくそれは、さながら甘い毒。この味を覚えてしまったら最後。振り回されて流されて、優しくされて溺れていく。
こんなことになるなら初めから好きになんてならなきゃよかったな、なんて思いながら今日もまたミツのもとへ向かう。
慣れた手つきでミツの家の玄関に上がる。リビングの扉を開けると、お風呂から上がったばかりであろう部屋着姿のミツがテレビを見ていた。
「髪乾かさないと風邪ひくよ」
「だってだるいもん。Aが乾かして」
「私先にお風呂入る」
「乾かしてくんないならそのまま襲うよ?」
「…なんでそんなに甘えたなの」
「甘えたじゃねーしっ!お願いしてるだけだしっ!」
「はは、分かった分かった。乾かしてあげるから洗面所行こう」
椅子に座って嬉しそうに目を閉じるミツを見ると、やっぱり幸せだと思ってしまう。与える幸せやもらう幸せ、いろいろあるけどこうして共有する幸せは私にとってなによりの宝物。
手に触れる柔らかい髪が心地好い。叶うなら、こんな日々が「当たり前」になればいいのに。
私たちに「当たり前」なんてないことくらいわかってるよ。
「当たり前」がないことが「当たり前」だもんね。
この多幸感を「当たり前」にしちゃいけないんだ。
「はい、終わり」
「サンキュ。人に乾かしてもらうのって気持ちいいのな」
「乾かしてもらったことないから分かんない」
「俺が乾かしてあげてもいいけど?」
信じられないくらいのドヤ顔で言うから、思わず笑ってしまう。
「ははっ、まずはお風呂入らないと話にならないでしょ?」
「えー、俺を差し置いて?」
「さっき入ったんじゃないの?」
「もっかい入る」
「なんでよ」
不意に手を掴まれて、ミツの熱いところに宛てがわれた。
「Aが風呂入るとこ想像したらこうなった」
「中学生じゃないんだから」
「仕方ないだろ〜」
「最初からそのつもりだったんじゃないの?」
「……さぁ?」
ミツが不敵な笑みを浮かべたのを合図に、私たちは深い口付けを交わした。
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作者名:わ! | 作者ホームページ:http://twitter.com/mi2_lxxx
作成日時:2018年10月18日 14時