それでも明日は ＊4＊

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何時間か経って、ふと顔を上げる。
涼太と目が合って、お互い首を振る。
大きなため息だけが2つ、部屋に取り残されて。



「ご飯、作ろうかな」

「なに、すんの」

「何にしようかな」



考え事をしたい時、やけに凝った料理を作る。
何を作ってもめちゃくちゃ美味いんだけど、
作っている時のキラキラ感がない。
鼻歌が聞こえてきそうなほどのルンルンさもない。

ただ静かな部屋に、まな板と包丁の当たる音。
普段は心地良いのに、今は何だか寂しい。


ラジオが言った。
やっと火が消し止められたと。
ただビルも、スタジオも丸焦げになってしまい
その周辺の建物も一部焼けて、崩落したらしい。

そして、40名以上の遺体が収容されたと。

それから、クラッシュ症候群に気をつけて欲しいと。
倒壊した建物の下敷きになって発症する場合が多くて、
圧迫からの解放直後は、意識があるから
大したことないって思ってたのに
その後重篤となり死に至ってしまうこともあると。

だからもし、建物の下に人がいたとしても
すぐには持ち上げたり救出せず
救急隊員とかが来るまで待つべきだって。



「んなもん、無理だよなぁ…」



頭の片隅でわかってたって、俺なら絶対助けてしまう。
助けて欲しいって手を伸ばされて、
いや待て、なんて言える冷静な頭は持ち合わせてない。



「ん？何が無理なの？」

「んやぁ、なんも」

「…ふぅん、あ、そう」



ラジオのツマミを回す。
どこもかしこも、こんなニュースばかり。
そんなん分かってんだけどさ。

もう頭の中パンクしそうで。
どうにもならなくて、辛くて。





＿＿＿ ｶﾁ…





〈そうなの、俺達はね、YouTubeしてたから。
みんなで集まってて全然無事だったんだけどさ。
…もう、3日、まだ3日なのに、
この世界どうしちゃったんだろってくらい酷くて。

もう、自分の足元も崩れそうで、悲しくて〉



「じゅ、り…」



全部の音がやんで、樹の声だけが響く。



〈そんな思いの人いっぱいいるかなって、
このラジオを、敢えて、届けることにするよ〉

ジェシー。


〈本当はね、6人でこれ出来たら良かったんだけど。
少し用があって来れない人もいるから。
まずはこの3人でってことで〉

北斗。


ラジオから他の方グループの声が聞こえる。
そんなのよくある事なのに、
なんだか、それだけで少し安心できた。

世界には、俺らだけじゃないんだって。

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