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照とめめが来ても、ラウールの心が安らぐことはない。
きっと、佐久間でも康二でもそう。
記憶の引き出しをこじ開けようと必死になって、
それでも上手くいかなくて、焦って。
タイムスリップでもしたかのような
わけも分からない世界に放り出されて、
自分が心許す仲間は近くに存在してなくて。
見慣れない景色がそこに広がってたら、
誰だって心落ち着くことはないだろう。
「ラウール、口ゆすげる?気持ち悪いだろ」
「ふっかから服貰った。
舘さんごめん、着替えさせるの手伝って」
「ん、了解」
抵抗する気力もないのか、さめざめと泣きながらも
されるがままになっている。
その間にも、息をするのと同じように謝り続けていた。
熱は、40℃近くまで上がった。
本当はいけないんだろうけど、今の状況では
家にある解熱剤を試して様子を見る他なかった。
処方箋を貰いに行けるような余裕も、
そもそも病院自体今の状況下では軽傷と言える
ラウールに薬を分け与えられる余裕もない。
これ以上酷くなりませんようにと祈り、
傍に居続ける以外の選択肢はなかった。
「阿部ちゃん、代わるよ」
交代制で部屋にいようと決めた。
みんなそばに居たい気持ちは同じだったけど、
それよりもラウールの負担を考えて
じゃんけんで決まったペアで、傍にいようって。
俺は珍しく翔太と。
康二と佐久間のペアだったけど、
一抹の不安を感じて、康二と照のペアに。
(佐久間には大騒ぎされたけど、満場一致の話)
案の定、上がり続ける熱に康二は何度も泣きそうになり、
照はずっと大丈夫だと言い続けたらしい。
その2人と代わって俺たちが部屋にいる。
2人共話が盛り上がるわけでもなく、
ただ静かに本を読んだりして、静かな時間を過ごした。
話さないけど、心地いい関係。
時々ラウールの冷えピタを変えたり、汗を拭ったりして
暗い部屋の中、ゆっくりした時間を過ごした。
そして、次は舘さんとふっか。
「特に、変わりなかったよ、大丈夫」
「そっか、よかった」
「うん、変わり、なかった」
「___ 涼太、俺急に腹減ってきた」
「え?何?珍しいね」
「腹が減ったの、それもめちゃくちゃ。
これは食わなきゃ寝れないって訳。
ふっかは飯作らねぇじゃん?阿部ちゃんも、ほら。
涼太の飯じゃなきゃ、寝れないなぁ!!」
ラウール起きるでしょ、と窘められた翔太が
舘さんをほらほら、と急かす。
訳の分からない俺達はもちろん、ぽかん。
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みさ(プロフ) - ともみさん» はじめまして、コメントありがとうございます!朝から泣いた、というコメントがとても嬉しいです…!お話が進むスピードも、更新もゆっくりではありますが、これからもよろしくお願いします! (2022年10月31日 17時) (レス) id: 1fb25e0756 (このIDを非表示/違反報告)
ともみ(プロフ) - はじめまして。お話!楽しみに読ませて頂いてます。ほんと、泣きました。苦しい状況だけど、皆で支えあって、皆で諦めなくて、朝から泣きました。ありがとうございます。これからも楽しみにしています。 (2022年10月31日 8時) (レス) @page24 id: b5302d2fbf (このIDを非表示/違反報告)
みさ(プロフ) - ぴょょさん» コメントありがとうございます。少し焦れったい方がドキドキするかな、と書き方を工夫しているので、そう言ってくださってとても嬉しいです!本当に寒くなってきましたね…ぴょょさんも、風邪をひかないように暖かくして、これからも楽しんでくださると嬉しいです。 (2022年10月25日 16時) (レス) id: 1fb25e0756 (このIDを非表示/違反報告)
みさ(プロフ) - Mさん» コメントありがとうございます。一気読み!少し長めですが、それだけ夢中になってくださったことがとても嬉しいです、ありがとうございます!止まってしまったり、描き始めたり、ムラもありますが大切に続けていきますので、よろしくお願いします。 (2022年10月25日 16時) (レス) id: 1fb25e0756 (このIDを非表示/違反報告)
ぴょょ(プロフ) - いつもどきどきしながら読ませていただいています!展開が…!緊張しますが楽しみにしています!寒くなってきたのでお体ご自愛ください! (2022年10月24日 23時) (レス) @page14 id: d8e70a51b7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みさ | 作成日時:2022年10月6日 19時