検索窓
今日:13 hit、昨日:40 hit、合計:19,179 hit

. ページ6







「ほんとは、っ、ほん、とはっ…!」

「ん、なあに」


「まだ、みんなと、いっしょに、いたいっ…!!!」

「うん、俺らもだよ」



本当に嬉しかった。

そして、彼は本当に優しい仲間に囲まれているんだと
大切な宝物なんだと思った。
医師として、出来うる限りのことはしようと誓った。
私情を挟んではならないとは思うけれど、
娘と同じ歳くらいの彼を見ていると、
ほんの少しの情は許して欲しい。



そして、例年より早く観測された初雪の降った日。
私達は、未曾有の大震災に襲われた。
震源地は東京、地震の規模はマグニチュード8.0。
最大震度は震度7。

すぐに医師達も含め、医療従事者が自らの
安全確保をした後に動き始めた。
【命の選別】をし始めたんだ。

救いたい、でも全てを救うことは出来ない。
だからこそ、持ちうる限りの全ての力を尽くして
救える命を救わなくてはならない。

タグによって専門性を考慮し、担当が決まる。
私は緑で比較的軽傷者と院内の担当。
そんな私ですら、罵詈雑言は凄かった。
助けられなかった命を目の当たりにした人達は、
やり場のない怒りを私達にぶつける他なかったから。
きっと、黒のタグを付けた医師達は、
身を引き裂かれるような思いだっただろう。

救援物資をかき集めて、不足、不足、不足。
冬の寒さに体調を崩し、人ではどんどん減っていく。
1ヶ月近くたっても、状況はさほど変わらない。
マシにはなっていけども、苦しさの種類が
増えていくだけで良くはなっていかない。



みんな、限界だった。




「どーもーっ!」

『SnowManでーすっっ!!!』




そんな中、少しの休憩を取りに医局に戻ると
看護師さんが直ぐに私を手招きした。
情報収集のためにつけられていたテレビが
今だけは華やかな画面に変わっていた。



「ロビーの人達もテレビに夢中ですよ」

「山城先生、」

「はい、どーぞ、ペンライト。
…息子が、この舞台の裏方にいてね。
絶対見てってグッズを送ってきてくれたんです」

「息子さん…」

「…頑張って、ですって。
随分会ってないのに、…強くなってました」



白色に光らせたものを私に手渡して、
山城先生は自分の席で画面を見つめていた。
私もペンライトを握りしめて、夢中になった。

泣き崩れた彼等は、どれだけのものと闘ったんだろう。

私は1部しか見ていないから、彼らの全てを知らない。
どれほど苦しみ、辛い道を必死に歩いたかも。
この先に待ち受けている困難も。

.→←大切な人



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (49 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
175人がお気に入り
設定タグ:snowman , ラウール , SNru
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

そら(プロフ) - みささん» そうなんですね!こちらこそいつも素敵なお話ありがとうございます!!これからも頑張ってください! (11月4日 9時) (レス) @page5 id: 288b7a7513 (このIDを非表示/違反報告)
みさ(プロフ) - そらさん» コメントありがとうございます!いえ!男性の方であってますよ!僕や俺などの方もいますが、敢えて丁寧で中性的なイメージを持たせるために一人称を私にしています。なのでバッチリ正解です!いつも読んでくださってありがとうございます!これからも宜しくお願いします (11月3日 19時) (レス) id: 1fb25e0756 (このIDを非表示/違反報告)
そら(プロフ) - あのお医者さんって女の方だったんですね!!恥ずかしながら今気づきました、、🤦🏻‍♀️ (11月3日 18時) (レス) @page5 id: 288b7a7513 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:みさ | 作成日時:2023年10月30日 13時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。