tune.49 ページ49
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「───あら、王さまったら、こんなところで寝ちゃって」
「ほんとだねぇ‥‥。俺も寝ようかなぁ‥‥」
「凛月先輩! Leaderと並んで寝転がらないでください! これからLessonなのですよ!」
練習室の前に着くと、そんな会話が聞こえてきた。
扉を開ける音に振り向いたかさくんが「瀬名先輩」と呼び、助けを求めるような顔をする。
3人が集まっている窓際に行くと、散らばった書きかけの楽譜に囲まれて気持ち良さそうに寝ている王さまがいた。
足元に落ちているそれを何の気なしに拾い、音符を目で追いかける。出来は悪くない(そもそも彼が作る曲に基本的にハズレはない)のだが、このフレーズには大きくバツがつけられていた。
次に拾った楽譜にも、バツ、バツ、バツ。
(‥‥スランプ?)
昨年度のことを思い出し、少し顔をしかめた。
「なに難しい顔してるんだ〜‥‥?」
眠たそうな声がした。
いつの間にか王さまが目を覚ましていて、もぞもぞと起き上がる。
「Leader! やっと起きたんですね! もう!」
「うるさいぞスオ〜、寝起きには優しくしろ」
「Lesson前に寝ている貴方が悪いのです!」
「そういえば、何で王さまはこんなところで寝てたのかしら?」
大きく伸びをしながら、ついでに欠伸をして、王さまは散乱する楽譜を適当に集め始めた。そして、「作曲してたんだけどイマイチ乗らなくてな」とどこか不満そうに言った。
「珍しいねぇ、王さまが作曲に手詰まるなんて。何の曲作ってるの」
「ちょっとな、ある人間をテーマにしてる」
「あら、もしかしてソロ曲?」
「うーん、悪いけど違う」
3人は「ある人間」というのに見当がついていないようだが、俺は以前聞いた話を思い出した。そして、ソロ曲ではないという言葉によって、それが確信に変わる。
「そいつのことを知れば知るほど、今まで考えてたフレーズに納得できなくてさ。思いつくままに書いてたんだけど、なんかしっくり来なくて。湧いてくる霊感が逆に枷になる! 宇宙だ、あいつは!」
集めた楽譜をバッと宙に散らして「おれは天才のはずなんだけどな!」と髪を掻きむしっている。
「‥‥ねぇ、あんたさぁ、惚気? それ」
「惚気? なんでだ?」
「‥‥‥はぁ、別にいいけど」
4人は訳がわからないといった顔で俺を見ている。なるくん、かさくん、くまくんはともかく、王さまがこの調子ではこの先が思いやられる。
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夏向(プロフ) - りんさん» コメントありがとうございます。めちゃくちゃ原動力になります!! (2021年5月16日 22時) (レス) id: d3650b90b8 (このIDを非表示/違反報告)
夏向(プロフ) - れいゆふさん» ありがとうございます。そういったコメントを頂けると作者冥利に尽きます…!! (2021年5月16日 22時) (レス) id: d3650b90b8 (このIDを非表示/違反報告)
りん - とても面白かったです!続きがとても楽しみです! (2021年5月16日 15時) (レス) id: 5a0e3d3105 (このIDを非表示/違反報告)
れいゆふ(プロフ) - めっちゃ好きです!更新楽しみにしております! (2021年5月12日 3時) (レス) id: e48528e707 (このIDを非表示/違反報告)
夏向(プロフ) - 星宙*°さん» ありがとうございます。感想めちゃくちゃ嬉しいです…!のんびり更新の上どこまで続くかわかりませんが、最後までお付き合い頂ければ幸いです^^ (2021年5月11日 22時) (レス) id: fd39a6918d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏向 | 作成日時:2021年3月31日 16時