tune.48 ページ48
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突然の質問に、Aは少し驚いた顔をして振り返った。そして、考え込むように目を伏せながら、とんと住宅の塀に体重を預け、ボーダーの基地に目を向ける。
「やっぱり街や人を守りたかったからか？」
「そんな崇高な理由じゃないですよ。
───4年前、実家が全損したんです」
基地を映していたはずの双眸は、過去に思いを馳せる。そして、その時の記憶を再生している。
「生まれ育った家でしたし、それなりに愛着はあったんです。‥‥築20年くらいだったかな。結構古かったんですけどね」
壊れるときは一瞬でしたね、という言葉には、特に感情は見出だせなかった。もう彼女の中では整理がついてることなのだろう。
「両親も私も運良く助かりました。
新しい生活が落ち着いて、だんだん皆近界民との戦争状態に慣れてきても、私はどうしても壊された家のことが忘れられなかったんです」
未練がましいですかね、とAは笑った。
そこでそれを「未練がましいな」と一蹴できなかった。できるわけがない。
「生まれてからの思い出が詰まってたんだろ」
「はい」
「じゃあ、忘れられなくて当然だろ。
‥‥それじゃ、Aは近界民に怒ってたから、ボーダーに入ったのか？」
「入隊の理由はそれですね。
でも、今でも続けてる理由はそれだけじゃないです」
ただ楽しかったから。
そう笑ったAの表情は、夕焼けと相まってとても綺麗に見えた。
「やってみたら、楽しかったんですよね、これが。
ぶっちゃけ私才能なくて、最初の頃は全然勝てないし思い通りにならないしで、主に近界民への怒りを原動力にしてました。でもやっぱり、復讐心だけを源にするの疲れるなって」
負、特に怒りや殺意といった感情を維持し抱え続けるのは、思いの外エネルギーがいる。そしてその内、その燃やした負の感情に飲み込まれる。昔どこかで読んだ本に、そう書いてあったのを思い出した。
「楽しくなきゃ何事も続かないしできないですよ」
「‥‥そうだな。おれも、それはよくわかる」
「作曲したり歌ったりしてるレオ先輩は心底楽しそうにしてますもんね」
「それを見てるおまえも、結構楽しそうだぞ」
Aは虚をつかれたように目を瞬かせた。
あれは無自覚だったようで、少し照れたように顔を隠す。
「別に恥ずかしいことじゃないだろ？」
「面と向かって言われると言いようのない羞恥心が」
「わはは！ 照れ屋だなAは！」
やめてください、と覇気のない声だけが返ってきた。
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夏向(プロフ) - りんさん» コメントありがとうございます。めちゃくちゃ原動力になります！！ (2021年5月16日 22時) (
レス) id: d3650b90b8 (このIDを非表示/違反報告)
夏向(プロフ) - れいゆふさん» ありがとうございます。そういったコメントを頂けると作者冥利に尽きます…！！ (2021年5月16日 22時) (レス) id: d3650b90b8 (このIDを非表示/違反報告)
りん - とても面白かったです！続きがとても楽しみです！ (2021年5月16日 15時) (レス) id: 5a0e3d3105 (このIDを非表示/違反報告)
れいゆふ(プロフ) - めっちゃ好きです！更新楽しみにしております！ (2021年5月12日 3時) (レス) id: e48528e707 (このIDを非表示/違反報告)
夏向(プロフ) - 星宙*°さん» ありがとうございます。感想めちゃくちゃ嬉しいです…！のんびり更新の上どこまで続くかわかりませんが、最後までお付き合い頂ければ幸いです^^ (2021年5月11日 22時) (レス) id: fd39a6918d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夏向 | 作成日時：2021年3月31日 16時
