tune.29 ページ29
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レオさんの前に膝をついて、「立てますか」と声をかけた。何も声を発しない彼に不安を覚える。
「‥‥立てる」
「どこか怪我したとか、ないですか?」
「おれは、平気」
いつもの彼らしくない受け答えに少し心配になるが、目立った傷はなさそうなところにまず安心する。
「瀬名先輩、羽風先輩、すみませんが皆を保健室に連れて行ってもらえませんか。佐賀美先生には話を通しましたので、取り敢えずそこで休んでいてください」
「ちょ、ちょっと、何の説明もしない気!?」
「いいえ。この件───いや、私のことに関しては、後で必ずお話しに行きます。まずはこの近界民を片付けなければいけないので、それが終わるまでは待ってもらえませんか」
ぱらぱらと他の生徒が集まって来ていることに気づいたのだろう。瀬名さんは一旦不満げな表情を引っ込めて、呆けているレオさんの腕を引いた。
朱桜くん達も後ろ髪を引かれるような顔ではあったが、大人しく先輩についていった。
──
「お疲れ、千田。Knightsと羽風は中にいるぞ」
保健室から丁度出てきた佐賀美先生が、私を見つけると労うような表情を見せた。
突然お願いしてすみません、と返すと「これでも保健室の先生なんでね」と笑った。
「やっぱり、あいつらには話すのか?」
「目の前で見られちゃいましたしね。生徒会にも後で事情説明に行きます。どうせ蓮巳さん辺りから報告に来いと言われるだろうし」
おまえも休めるときに休めよ、という言葉を残して佐賀美先生は職員室に戻っていった。多分、気を遣って席を外してくれたのだろう。
軽くノックだけして保健室に入る。
スマホをいじっていた瀬名さんや羽風さんがぱっとこちらを見た。待ちくたびれた、とでも言いたげだ。
朱桜くんはそわそわと椅子に座っており、凛月くんはベッドで寝ていた。相変わらずで、今はそのことに胸を撫で下ろす。
レオさんは、もう1つのベッドで大の字になって天井を眺めていた。私の姿を捉えると、ばっと身体を起こす。
「お待たせしました」
「仕事、終わったの? Aちゃん」
「はい」
凛月くんを起こしたほうがいいだろうか、と思ったとき、瀬名さんが彼の布団を引っ剥がした。
「ほら くまくん、来たよ!」と些か乱暴な起こし方。安眠妨害を何よりも嫌う彼がそんなことされたら怒りやしないか、と思ったが、凛月くんは眠そうに目をこすった後、私を見て目が覚めたようだった。大欠伸をしながらも私が話すのを待っている。
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夏向(プロフ) - りんさん» コメントありがとうございます。めちゃくちゃ原動力になります!! (2021年5月16日 22時) (レス) id: d3650b90b8 (このIDを非表示/違反報告)
夏向(プロフ) - れいゆふさん» ありがとうございます。そういったコメントを頂けると作者冥利に尽きます…!! (2021年5月16日 22時) (レス) id: d3650b90b8 (このIDを非表示/違反報告)
りん - とても面白かったです!続きがとても楽しみです! (2021年5月16日 15時) (レス) id: 5a0e3d3105 (このIDを非表示/違反報告)
れいゆふ(プロフ) - めっちゃ好きです!更新楽しみにしております! (2021年5月12日 3時) (レス) id: e48528e707 (このIDを非表示/違反報告)
夏向(プロフ) - 星宙*°さん» ありがとうございます。感想めちゃくちゃ嬉しいです…!のんびり更新の上どこまで続くかわかりませんが、最後までお付き合い頂ければ幸いです^^ (2021年5月11日 22時) (レス) id: fd39a6918d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏向 | 作成日時:2021年3月31日 16時