鈴と、笑顔と、一目惚れ。【土方十四郎】

一目惚れ10. ページ11

.



「……辻斬り？」

「ああ。最近江戸で多発してる」



今日も「すずかや」に寄り、団子を食べる。

今の時間帯は客が少なく、Aは隣に座っている。


「数日前の昼時にもこの辺であった」

「……あぁ……そういえばあったような。

その辻斬りがどうかしたんですか？」

「犯人は今まで命を奪うようなことはしなかったんだが………その時ついに死人が出てな」


なにか見たりしてないか、と尋ねると、Aは首を横に振った。


「……攘夷浪士の仕業ですかね？」

「狙われたのはただの一般人だ。恐らく通り魔のようなモンだろうな」


この近辺で起きてからしばらく辻斬りは現れていない。真選組(おれたち)は明日辺りまたでるだろうと踏んでいた。


「……そうなりゃ真選組(おれたち)の出番って訳だ」


団子の最後の1つを口に運び、串を置く。
ごちそうさん、と顔をあげると、顔を曇らせたAが目に入る。


「………怪我人、出るんですか」

「平気だ。相手はそんなに強くないだろうしな」

「……でも、心配です。
……あ、土方さんたちの実力を疑ってるわけではないんですが、………」

「大丈夫だ。心配すんな」


そう、二、三度軽くAの頭を叩いた。
不安そうな表情が少しだけ和らぐ。


「なんなら終わってからここに直行してもいいぞ」

「是非お願いしたいですね」

と、Aはようやく柔らかく微笑んだ。

一目惚れ11.→←一目惚れ09.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す