眼醒め ページ16
眼醒め
×××
「――……先生?」
銀時達が出かけて来ると言った日の夜のことだった。
小さな物音に目を覚まし、松陽の元へ行ったAは眼を見張った。
「……ああ、A、見てしまいましたか」
困ったように笑う松陽は畳に顔を押し付けられた。そこには黒い着物と、深くまで被った笠をした男たち。――立ち込める腐った血の匂い。
蛇に睨まれた蛙のように身体全身が緊張して動かない。しかし、それを振り払いぎりりと歯を食いしばったAは剣を振り抜き松陽を抑える男へ迫った。「やめなさい!!!」
「目的は私を連れて行くことでしょう。――……その子には、手を出さないでください」
停止した身体に一拍遅れて刃が首に食い込み、血が一筋流れる。
「A」落ち着かせるように、穏やかな声がAの耳に届く。Aは下を向いたまま、小さな声で松陽に問うた。
「……私を、置いて行ってしまうの?」
その言葉に、松陽は顔を歪めた。ゆらりと顔を上げたAの頬には涙が落ちていた。
違う。君を置いて行くわけではない。私は、罪を暴かれるべきなのだ。
松陽は思い浮かぶ限りの言葉を掛けようとするも、Aの眼に射抜かれては言葉が出なかった。
Aの孤独を溶かしたのは自分だった筈なのに、その孤独の心を再び凍り付かせるのが自分だなんて。
無理矢理立たされた松陽は、Aに手を伸ばすことも許されなかった。ただ、零れるままにAを呼ぶ。
「……独りは、怖いよ、先生」
「――…………A……私は」
「嫌だ。嫌だよ、先生。私を、置いて行かないで。先生”まで”、私を置き去りにしないで」
首に刃が食い込んだまま、Aはそう呟く。
両手で握った剣がぶるりと震えた。まるで、Aの声に反応するかのように。
「……すぐに、戻ってきますよ。なに、大した用事じゃないんです」
そうやってどうにか絞り出した言葉を、Aが信じるとは到底思わなかった。
たったその一言で、Aがはいと頷く筈はない。
松陽は引かれるままに歩きだした。
「――…………天道衆か」
205人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ルアルア(プロフ) - 無影灯さん» コメントありがとうございます!更新が遅くお待たせしてしまうことも多いかと思いますが、これからも応援していただけると嬉しいです! (2020年3月29日 17時) (レス) id: 013413cedf (このIDを非表示/違反報告)
無影灯(プロフ) - 見入っちゃいました…とても素敵なお話でした!更新応援してます! (2020年3月23日 21時) (レス) id: 26d889b496 (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - 神月さん» コメントありがとうございます!ありがたいお言葉本当に感謝します...相変わらずの低浮上ですが、読者様のお言葉を励みに頑張ってまいります!! (2018年8月30日 10時) (レス) id: 61b26fbf84 (このIDを非表示/違反報告)
神月(プロフ) - 読み応えがすごくあります!次の話がとても気になります!面白いです!作者様のペースで、更新頑張ってくださいね。応援してます! (2018年8月27日 6時) (レス) id: 52a5891399 (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - ginさん» コメントありがとうございます! 更新は相変わらず遅いですが、面白いと思っていただけるような作品を目指して頑張って行きます! (2018年7月8日 9時) (レス) id: 013413cedf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ルアルア | 作成日時:2018年4月7日 3時