小さな侍 ページ2
小さな侍
×××
「――まとめてたたんでしまえェ!!」
木刀を持った子供がわっと襲い掛かる。
冷めた眼で高杉はその姿を瞼に納め、手に持った木の棒を握り締めた。
名門講武館でさえ手に余るほどの才覚の持ち主である高杉も、この程度のこと、取るに足らないことであると、そう見下しながら構える。
鬱陶しかった。一々文句を振りかけて来る塾生も、ただ仕返しをしただけで叱る父親も。
己の持つ力は、意味のない戦いにいずれ使われる事となるのか。高杉は日々を忙しく移ろいゆく景色に笑われていた。
――高杉と桂、塾生の間をはっきりと分けるようにして刀が石畳に突き刺さる。
塾生たちは困惑に立ち止まった。高杉は目に映る真剣に驚きを隠せない。
「ギャーギャーギャーギャーやかましいんだよ。溌情期かおめーら」
気だるげな声にその場にいる誰もが顔を上げた。
「稽古なら寺子屋でやんな。学校のサボり方も習ってねェのかゆとりども」
やがて立ち上がると「しらねェなら教えてやろうか」と言うが、それに反論する塾生。しかしそれを無視し少年は軽い動作で木から飛び降りた。
足の裏でしっかりと塾生の顔面を踏む。どふ、と音を立てて気絶した塾生の背を踏む少年は、小指で鼻をほじり他の塾生たちに目を向けた。
「侍がハンパやってんな。やる時は思いきりやる。サボる時は思いきりサボる。俺がつき合ってやるよ、みんなで一緒に寝ようぜ」
「誰が寝るかァ!!」
「許さんぞ貴様!!」
木刀を構え走り出そうとする塾生たちの前に――ふ、と影が落ちる。
何もかもを見透かすような瞳が高杉を射抜き、どきりと心臓が脈を打った。
「――銀時」
「うわっ、こいつ、いつの間に!?」
ぴたりと足を止めた塾生たちに、拳骨が落とされその場に崩れる。銀時という少年の顔が青ざめた。松陽の登場に、三人の前に現れた少女は横に退いた。
「……銀時、よくぞいいました。そう……侍たるもの、ハンパはいけない。多勢で少数をいじめるなどもってのほか。ですが銀時。君たちハンパ者がサボりを覚えるなんて100年早い」
こつんという音のわりに合わず、銀時の身体はありえないほどの速さで地面へめりこんでしまった。
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ルアルア(プロフ) - 無影灯さん» コメントありがとうございます!更新が遅くお待たせしてしまうことも多いかと思いますが、これからも応援していただけると嬉しいです! (2020年3月29日 17時) (レス) id: 013413cedf (このIDを非表示/違反報告)
無影灯(プロフ) - 見入っちゃいました…とても素敵なお話でした!更新応援してます! (2020年3月23日 21時) (レス) id: 26d889b496 (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - 神月さん» コメントありがとうございます!ありがたいお言葉本当に感謝します...相変わらずの低浮上ですが、読者様のお言葉を励みに頑張ってまいります!! (2018年8月30日 10時) (レス) id: 61b26fbf84 (このIDを非表示/違反報告)
神月(プロフ) - 読み応えがすごくあります!次の話がとても気になります!面白いです!作者様のペースで、更新頑張ってくださいね。応援してます! (2018年8月27日 6時) (レス) id: 52a5891399 (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - ginさん» コメントありがとうございます! 更新は相変わらず遅いですが、面白いと思っていただけるような作品を目指して頑張って行きます! (2018年7月8日 9時) (レス) id: 013413cedf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ルアルア | 作成日時:2018年4月7日 3時