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「喧嘩両成敗です。……君たちも早く彼らを連れて学校へお帰んなさい。――小さなお侍さん」
頭に見事たんこぶが出来た銀時を引き摺り立ち去る松陽。その後ろをゆっくりと歩く少女は、ふいに高杉と桂を振り返った。
縹色の瞳はじ、と二人を見据えるものの、少女は何も発さず再び歩き始め姿を消した。
その姿を茫然と見ていた桂は、思い出したように呟く。
「そうか、あれが噂に聞いた、近頃白髪の子供を連れた侍が私塾をひらき、金もとらずに貧しい子供たちに手習いを教えているときいたが、あれが松下村塾の――吉田松陽」
×××
「……馬鹿だね、銀時。なんでサボりなんてしようと思ったの」
囁くような声だが、銀時にはっきりと伝わる言葉に銀時はむっと眉根を寄せた。
「お前にゃ言われたかねーよ!!」
「ええ……」
不服そうな表情を浮かべるA。その二人のやり取りを先に歩きながら聞いていた松陽はくすりと笑った。
今だたんこぶを頭上に乗せたままの銀時はいてて、と呟く。それにAが自業自得だよと指摘した。
「それより……なんで俺のいる場所が分かったんだよ。AはAで割り込んで来るし」
「おや、私に分からないことがあるとでも? まあAのお陰もあるんですけどね」
「やっぱりお前か!」
Aに突っかかる銀時、しかしそれを躱したAはすたすたと銀時よりも少し早く歩きだす。
歩みを遅めた松陽はAの隣に来ると、柔く腰を曲げた。
「さっきの小さなお侍さんたちに、何か気が付いた事でもありましたか?」
前方を見据えたままAは押し黙る。その様子を銀時は不思議そうに眺めていた。
時々、Aは銀時も予想出来ない行動をとる。縹色の瞳は己の心など見透かせないような、悪く言えば空色よりも濁った色をしているのに、彼女は自分の行動を簡単に見透かしてしまう。
きっと今度も、あの二人について何か思うことがあったのだろう。そういう時、彼女は決まって対象の人物を深く見るのだ。
Aは松陽を見上げて薄く笑った。
「――……なんでも?」
きっとAにとって今話す事ではない。
銀時はそう確信した。
×××
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ルアルア(プロフ) - 無影灯さん» コメントありがとうございます!更新が遅くお待たせしてしまうことも多いかと思いますが、これからも応援していただけると嬉しいです! (2020年3月29日 17時) (レス) id: 013413cedf (このIDを非表示/違反報告)
無影灯(プロフ) - 見入っちゃいました…とても素敵なお話でした!更新応援してます! (2020年3月23日 21時) (レス) id: 26d889b496 (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - 神月さん» コメントありがとうございます!ありがたいお言葉本当に感謝します...相変わらずの低浮上ですが、読者様のお言葉を励みに頑張ってまいります!! (2018年8月30日 10時) (レス) id: 61b26fbf84 (このIDを非表示/違反報告)
神月(プロフ) - 読み応えがすごくあります!次の話がとても気になります!面白いです!作者様のペースで、更新頑張ってくださいね。応援してます! (2018年8月27日 6時) (レス) id: 52a5891399 (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - ginさん» コメントありがとうございます! 更新は相変わらず遅いですが、面白いと思っていただけるような作品を目指して頑張って行きます! (2018年7月8日 9時) (レス) id: 013413cedf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ルアルア | 作成日時:2018年4月7日 3時