手の届かなかった、君へ tkin (ページ1)

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まだ少し肌寒い朝、いつも同じバスに乗る。

このバスに乗るのも2年目で、綺麗に咲く桜が風で散っていくのを横目に学校へ向かう。
そんな姿を見るとそろそろ桜の季節が終わってしまう頃かなと、なんだか気持ちが切なくなってしまう。

俺は授業が始まる前の朝が早い静かな教室が好きで、他の人より早めに来て勉強したり、ただ外を眺めたりしている。

外では朝練している人たちの声が聞こえてくるから窓を少しだけ開けて、運動部のかけ声、ボールの音、地面を足で蹴る音、たくさんの音を聞く。

色んな音が聞こえてきて心地がいい。うるさすぎず、でも静かすぎず。

そんな朝に1人この空気を遮る人がいる。俺の次に必ず教室にやってくる。

「(あ、)」

上靴の踵を踏んだ部分を引きずっている音が誰もいない廊下に響く。
それがだんだん近づいてきて教室の前の扉を開ける。
自分が座っている机が後方なのでどうしても視界に入るけれど、机に頬杖を付いて広げている最近お気に入りの小説を広げ見てないフリをする。

「(…かっこい、)」

見てないフリ、と言うのは彼が必ず視界に入る角度でいるから。

髪の毛が肩に付くくらいの長さで、校則違反の茶髪がよく似合う。後ろ髪をハーフアップにしているけれど前髪は長く下ろされていてそこから覗く切れ長の目がかっこいい。
その目に俺はどう映っているだろうか。

俺と真逆の見た目と性格、何故か不思議と興味が湧いて気づいたら毎日目で追っていた。