2 ページ36
.
「……遅い｡余りにも遅すぎる」
教室で1人そう呟いてしまうほどには､私は待たされていた｡
ゆうに一時間は経つんじゃないだろうか｡
待ち時間にやっていた課題は全て終わってしまった｡
――――連絡でも一本入れてみるか｡
スマホに手を伸ばし電源を付ける｡
――――そこにはおびただしい程のメッセージが届いていた｡
勿論送り主は小鳥遊である｡
たかなしA
たかなしA
たかなしいまどこ
たかなしあいたい
たかなしどこ
10分前から連投されているメッセージは今もなお増え続けている｡
マナーモードにしていた為気が付かなかった｡
急いで小鳥遊に電話を掛ける｡1コールで繋がったが､何も応答がない｡
取り敢えず教室から出て下駄箱へ向かう｡
小鳥遊の下駄箱を確認するが靴は無い｡外にいるのだろうか｡
外に出て校舎の周りを駆け足で探す｡
遠くから聞こえる運動部の声や吹奏楽部の練習の音が煩わしい｡
「……ッ､」
普段運動しないツケが回ってきた｡
息が切れて思わず立ち止まる｡
……もう､帰ってしまったのだろうか｡
自分で言うのもなんだが､小鳥遊が私を置いて？
もう一度繋がったままのスマホを耳に当てる｡応答はない｡
「……小鳥遊？」
息を整え声を掛ける｡
「「……A」」
返事が返ってきた｡同じ声なのに2重に聞こえる｡
それと同時に後ろからするりと細長い腕が肩口から伸びて回される｡
2重に聞こえたのは､電話口と後ろからか､と漸く合点がいった｡
「……探したんですけど､」
「…………A､A……」
首元に彼の細くて柔らかい髪と息が掛かって擽ったい｡
前を向いたままなので視界には入っていないが､
後ろから抱きしめられていることも､肩口に顔を埋められていることも分かった｡
私が教室で小鳥遊を待っている間に何かあったのだろう｡
今の彼の様子を見れば明らかだったが､此処で言及するのは憚られた｡
代わりに､極めて穏やかな声を心掛けて彼に声を掛ける｡
「……小鳥遊､かえろ」
そう言って､回された手をぽんぽんと叩くと､首元で彼の髪がふわりと揺れた｡
腕がゆっくりと離される｡
これは肯定の意なのだろうと勝手に解釈し､振り返って彼の手を取る｡
――――漸く視界に捉えることができた彼の顔は､憔悴そのものだった｡
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 26人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
もぐもぐいちご(プロフ) - realさん» 返信遅れてしまってすみません；；realさんコメントありがとうございます！イラストも見ていただけて本当に嬉しいです…！これからも不定期ではありますが更新していきますのでよろしくお願い致します…！ (2023年4月24日 2時) (
レス) @page39 id: 30f259b2ae (このIDを非表示/違反報告)
real(プロフ) - イラストの方から来ました！めっちゃきゅんきゅんしました(*´-`)作者さまのペースでの更新楽しみにしてます！ (2023年4月10日 12時) (レス) @page3 id: 3d1cb866c0 (このIDを非表示/違反報告)
もぐもぐいちご(プロフ) - 朱まぐさん» 返信遅れてすみません…！男の子視点､ヒロインは好きな子なのでとにかくかわいく見えるように意識してたのでそこに言及して頂けるの本当にめちゃめちゃ嬉しいです…！コメントありがとうございます！これからも拙文ではありますが楽しんで頂けると幸いです！ (2022年12月11日 12時) (レス) id: 30f259b2ae (このIDを非表示/違反報告)
朱まぐ(プロフ) - 初めまして、こんばんは。男の子全員素敵です！9ページ目では佐藤君目線になってヒロイン可愛いと思ってしまいました！笑読んでて癒されました☺︎素敵な作品ありがとうございます。無理せず作者様のペースで頑張ってください！ (2022年12月5日 22時) (レス) id: 0c936a9b54 (このIDを非表示/違反報告)
もぐもぐいちご(プロフ) - かんずめさん» コメントありがとうございます！下でも似たようなことを書いたのですが己の生み出したキャラたちを好きと言って頂けるの､本当作者冥利に尽きます…！はちゃめちゃに嬉しいです､これからも拙い文ではありますがお付き合い頂けると幸いです…！ (2022年11月16日 20時) (レス) @page22 id: 30f259b2ae (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：もぐもぐいちご | 作成日時：2022年10月30日 17時
