thunder【朔間凛月】 (ページ5)

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「Aってさあ、嘘下手くそだよねえ」

「…え、なんで？」

スタジオの中。

私の膝の上でさらさらと自分の髪を弄りながらそう呟いた彼に内心ドキリとした。
それを見透かしたように口元に笑みを浮かべると凛月くんは揶揄うように言った。

「雷、苦手なんでしょ」

…私はそんなに怯えているように見えていたのだろうか。はたまた彼の観察眼が特別秀でているだけなのか。自分でもあまり顔に出るタイプではないと自負していた為になかなか驚いた。

「Aってあんまり顔に出ないからさあ____分かりづらいけど」

俺にはわかるよ、と優しい声で言われるともう言い逃れができなくなってしまう。
ここは正直に言うしかないだろう。

「うん。昔から苦手なんだ」

「へえ、Aにも苦手なものあるんだねえ。なんか意外かも～」

でも雨の日は好きだ。洗濯物が乾きにくかったり、制服がびしょ濡れになってしまうことを除けば。

「じゃあ、俺と一緒に帰る？」

え、と声が漏れたのは彼があまり他人の干渉を良しとしないタイプだったからだ。

Tricksterのみんなには、夜遅くまでレッスンをしていた時などに送っていってもらうことはあるが、他のユニットのみんなにはそこまで頻繁に送ってもらうことはなかった。
何より、凛月くんがそれを提案したことにも驚いた。

「俺、本当は今日学校に泊まろうと思ったんだけどさあ。折角だしAのこと送るよ」

「え、でも迷惑じゃ…」

「ええ…断る方が失礼だって分かんないかなあ」

確かにそれはそうだ。あの凛月くんが重い腰を上げて私を送っていってくれると言うのだから素直に受け取るのが筋だろう。

「ありがとう。じゃあお願いするね」

私がそう言うと彼は満足したように微笑み、「じゃ、それ終わったら起こしてよねえ…」と言って膝の上で目を閉じた。