鬼は微笑まない

◆３２◆ ？？？SIED ページ33

彼女が見ている世界が俺の視界
外の光景なんて普通なら見れない
契約者を通してやっと見れるのだ

？【鬼が増えるねぇ…、どう思う？】

後ろの方で不貞腐れている鬼に
話しかけてみる
小学生くらいの小さな女の子だ

？【………私には関係のないことよ】

？【同胞が武器に練りこまれる瞬間
"あぁ、仲間が増えた"と思うよ？
僕らはただでさえ数が少ないし】

小さな女の子、名を"蕾王姫"
僕らの主を喰おうとしている
でも、僕はそれを許さないから
考えの違いにより仲が良くない

？【蕾は馬鹿だ、いつまでも子供で
永遠に僕に勝つことはできない】

蕾王姫は苛立ちを隠せないのか
歯をギリッと音が鳴るまで噛む
僅かながら血が滲んでいる
馬鹿にされると感情起状の幅が
大きくなってしまうから

？【僕の瞳が黒いうちは騒ぐなよ】

蕾【貴方に逆らおうとは思わないわ
敵わないってことくらい分かる】

蕾王姫は沈んだ声で言った
"黒鬼"であるからと力を過信せず
理解している点はいいだろうが…

契約した者を乗っ取ろうとする
ことは間違いではない
鬼は、契約者の欲望を喰らって
肉体と魂を呑み込む存在だから
思考については否定しない

？【なんだ、可愛いところもあるね】

蕾【それ、何回言うと飽きるの？】

人が褒めたのにこの返答か
暗滅姫は昔から美しかったけど
性格の問題で嫌われていたっけ
今思うと、随分と懐かしく感じる

？【僕らの主はあまり戦わないけど
根気良く待てば使ってくれるさ】

僕らの存在を知り変わったけど
元々は可愛らしくて優しかった
鬼を中に秘めながらも微笑んで
周囲の期待に応えようとしたら
プレッシャーが重なって死んだ
そう、"人間を壊すのは人間だ"…

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