鬼は微笑まない

◆２３◆ グレンSIED ページ24

小百合が病院送りにされて
正直、怒りが張り裂けそうになる
実力を隠したいがために小百合が
こんな痛々しい姿になってしまった

小「グレン様…、申し訳ありません」

グ「謝るな、これは俺のせいだ…」

隣には時雨も座っていて
悔しそうに顔を歪めている
悔しいさ、苦しいさ、すまない
俺が無力だからそんな思いをさせた

小「でも、凄く気分は楽なんです
傷が治って行くのが分かるって
感じがするんです…」

グ「本当か？」

小「はい」

柊Aが貼り付けた呪符
あれは柊の物ではなかった
治癒力を活性化させる効果……

グ「柊のお偉いさんがねぇ……」

ボソッと溜息を吐きながら言う
柊の教育を受けているのは確実
他の奴らと同じように笑えばいい
だが、何故こんなことをしたんだ？

プルルルルル

時「グレン様、お電話が…」

そんなことは分かっている
と、思いながら携帯の画面を見る
そこには"非通知"と書かれていた
俺の番号を知る人間は限られていて
そう簡単には情報も漏れないはずだ

グ「誰だ？」

出ないより出る方がいいと思い
警戒しながらも応答する

貴［花依小百合の容体は？］

柊Aの声が聞こえた
凝り固まった口調は崩れていて
学校でのみ敬語を使っているのか

グ「何故、柊のお前が気にかける？」

"柊"という言葉に二人が反応する
明らかに表情が強張っている
特に、時雨は殺意まで剥き出しだ

貴［先ほどは申し訳なかったと思う
あれほど醜く見苦しいものはない
征志郎は僅かな罪悪感もないもの］

普段の無機質な声とは違って
怒りや不満が混じっているようだ
こいつは基本的に真面目な奴だ
礼儀や基本を重んじるタイプだと
今日一日で分かった

グ「その誠意があるなら詫びろよ
何か、利益になる物を渡すとか」

貴［私が独自に研究した術式の資料
この程度なら渡せると思うけど］

この女は本気で詫びる気でいる
帝の月に研究資料を渡すことすら
厭わないほど、真面目な女だった
これは利用できるのではないかと
考えたが、柊の子女がそう簡単に
引っかかってくれるわけもないか

グ「律儀な奴だな」

通信は向こうからブチっと切れる
急に切られたせいで耳が変になった

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