彼はただの同居人《Ren.M》Part3

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あ 「蓮くん、離して、」




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どうしてこんなことするの…？


好きな人が居るくせに。私のことなんて『ただの同居人』としか思ってないくせに。




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彼の綺麗な指が私の鎖骨を辿る。


その瞬間、『んっ…』なんてつい甘い声を出してしまう。


擽ったくて、痛くて、苦しい。




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言葉にならない感情だ。




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目 「…男の部屋にのこのこと上がるなんて、随分無防備なんだね？Aって、」


あ 「そ、それは…」


目 「今だって、ちょっと触れただけなのに、簡単に甘い声出しちゃってさ…」




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私を見る蓮くんの目が怖い。


全然笑ってない、の…


なんだか怒っている、ように見えた。




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目 「…昨日しょっぴーになんかされた？」




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あ 「…っ」




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目 「…もしかして、キスでもされた？」




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私の髪の毛を優しく撫でた蓮くんは、


閉じていた唇を紡ぐようにして言った。




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目 「しょっぴーのこと、好きなの？」




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力強い言葉には反して表情は切なげで。




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どうしてそんなこと…？


私、蓮くんが分からない。




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ずるいよ。そんなこと聞かれたら、少しでも脈あるんじゃないかって思っちゃうじゃん。




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だけど、蓮くんが好きなのは私じゃなくて、


あのカフェの、笑顔の可愛らしい、女の子。




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ふとフラッシュバッグする記憶。




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それは、




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蓮くんとあの女の子が交差点で笑い合いながら歩いて行く姿だった。




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あ 「やめて…私は蓮くんのことそんな風に思ってない、こんなの嫌だよ…」




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ゆっくり近づいて来る彼の顔。


もうすぐで唇が触れ合うってところで、気付いたら突き飛ばしていた。


して欲しい、と思う気持ちとは裏腹に。




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今はここには居たくない。


何も考えずに、咄嗟に家を出て行こうとした。




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けど、家を出る直前。


見覚えのある背中が私の前にはあって。




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目 「…ごめん。出て行くべきなのは俺の方だから」




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私を置いて出て行ってしまった大好きな人。




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目には自然と涙が浮かぶ。




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あ 「ぐす…っ」




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なんでこうも簡単に当たり前の関係ですら崩れて行くんだろうね、悲しくて、悲しくて。


私はただ、蓮くんと一緒に居られればそれで…




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それから何日間、


蓮くんがこの家に帰って来ることはなかった。




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